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地震から3ヶ月:発生研からのご報告 2016.7.14

2016.07.14 ●ニュース

地震から3ヶ月:発生研からのご報告 2016.7.14

 

これまでの所長メッセージ
地震から復旧途上(2016.5.2)
熊本地震から11日(2016.4.25)
発生研内外の皆様へ(2916.4.19)
発生研及び全国の皆様へ(2016.4.15)
Be smart. Stay foolish. (2016.4.14)

Photos of the institute after the Kumamoto earthquake 2016

 

 

早いものであれから3ヶ月経ちました。この4月に所長になったばかりの私にとって、地震直後の対応は自分の限界を越えるものでしたが、所員の皆様のおかげで何とか乗り切れました。あの毎日昼の会議とそれに引き続く共同作業は発生研メンバーの結束をさらに強くしたと思います。普段ピペットより重いものを持たない我々研究者が、床を覆い尽くす重い機器や実験台を持ち上げ、漏水で床下に池のように溜まった水をバケツで汲み出し、細胞保存用の液体窒素を階段で運び上げました。全国から届く水や食料、お菓子は持ち寄って、皆でありがたくいただきました。所内の復旧を進めつつ、現状を定期的に文部科学省に報告し、テレビや新聞の取材も受けました。全国附置研・センター長会議では地震後の状況説明を行い、その縁で東大地震研の先生による特別講演も開催できました(満員でした)。

 

発生研の建物はいまだ地震直後のままで、外壁はひび割れ、窓は動きません。エレベーター2基のうち1つは稼働しておらず、高額機器も壊れたままのものが多いです。しかし人間とは不思議なもので、だんだん見慣れてくるものです。余震もかなり減って、夜叩き起こされることも少なくなり、気力・体力が戻ってきました。細胞培養やマウスの交配など基本的な実験は元に戻りつつありますし、外部から講師をお呼びする最先端研究セミナーも毎週開催しています。

 

研究室のスタッフ、リエゾンラボ研究推進施設のメンバー、事務部、業者の方々など多くの皆様の努力により、機器の被害状況はほぼ明らかになりました。そもそも直るか直らないかわからない状態から一つ一つ見積もりをとる作業は困難を極めましたが、何とか乗り越えて、膨大な件数の購入・修理交渉が進行しています。これからも多くの手続きが必要ですが、着実にこなしていくことで、年度内には何とかしたいと考えています。建物の修理方針についても、8月中(遅くとも9月)には説明会が開かれるはずです。

 

国内外の大学・研究所の皆様には様々な研究支援のオファーをいただきました。Development 誌にも旅費支援などで応援いただいています。この場を借りて深く感謝いたします。復旧まで時間がかかるため、今しばらくご厚意に甘えさせていただきます。また全国の皆様からたくさんのご寄付をいただきました。地震直後はどこも混乱しており、寄付のリストができあがるのに相当な時間を要しましたが、そのお名前を見るだけで涙がこぼれました。このリストは私達の宝物です。こんなにも多くの方々に支えられていることに改めて気付かされました。本当にありがとうございます。

 

今後の復旧状況は引き続きホームページで更新していきます。写真入りで内部の被害状況を公開している研究施設は少ないと思いますが、日々変わる状況を正確に伝えるために写真を日付とともに掲載し、決してチャンピオンデータを使わないこと、本文は誇張しないことを徹底しています。これは科学論文の書き方と同じです。もちろん発生研の現状を正確に知っていただくことが第一ですが、公開することで地震被害の情報が社会に共有されます。医療ミスを隠さないのと同じ原理で、次の地震への備えを呼びかけることにもなると考えています。近いうちに、私達の得た教訓(機器の固定法含む)をわかりやすくまとめるつもりです。新しい地震(特に直下型地震)の予知は現状では困難だそうです。日本のどこでも同じことが起こりえます。自宅と職場の耐震補強と重要品の固定、地震保険への加入を強くお勧めします。

 

完全復旧にはまだ時間がかかりますが、それを待たずに全開で実験しています。そして熊本から新しい研究成果を発信することで、私達なりの恩返しにさせていただければと考えています。これからも応援よろしくお願いいたします。

 

熊本大学発生医学研究所 所長

西中村 隆一