分野紹介
幹細胞誘導分野

当研究室では博士課程の大学院生を募集しています。
興味のある方はご連絡ください。(tera@kumamoto-u.ac.jp)

研究プロジェクト

 組織幹細胞の1つである血液幹細胞を用いての移植は、血液疾患の治療法としてすでに確立しており、予後を飛躍的に改善させた。この例でわかるように、幹細胞移植は、欠損した組織の補充、あるいは治療に伴う消費・消失の補填療法としてその効果が期待できる。幹細胞の臨床での利用価値については、十分に認められているものの、実際、組織幹細胞を治療に用いることは一部の幹細胞を除いてまだまだ難しい部分が多い。その大きな理由の1つは細胞分離の難しさにある。したがって、細胞の供給力という点において組織幹細胞では不便さが存在する。そこで、すべての体細胞へ分化できる他の多能性幹細胞( ES 細胞や iPS 細胞)から組織幹細胞を作成することでこの問題点を解決しようという試みがなされている。これまでに神経幹細胞、間葉系幹細胞などの幹細胞が ES 細胞から分化誘導することに成功している。さらに、 ES 細胞に極めて類似した分化能力をもつ多能性幹細胞( iPS 細胞)をヒトで皮膚の線維芽細胞等から作成する技術が開発され、この領域は本格的な臨床応用へ向けて急速に研究が発展しつつある。

 一方、多能性幹細胞は病気のモデルとしても利用できる。 iPS 細胞を患者から作り出すことで病気の解析に利用されている。このように、 多能性幹 細胞研究からの知見は、単純に再生医療に役立つだけでなく、広く医学研究に応用できる一面を持っている。

 私たちは、この多能性幹細胞の研究を行っている。研究目的は、以下の3つ specific aim を達成して、その得られた知見を臨床の研究へ応用し、革新的な新規治療戦略のコンセプトの提供や薬剤開発を行うことである。

(1) 組織幹細胞の1つである間葉系幹細胞の多能性幹細胞からの分化誘導系を確立し、間葉系幹細胞の発生起源、分化経路、分化と増殖の分子生物学的メカニズムを解明すること。

(2) これらの研究から得られた知見を臨床医学研究に応用すること。

(3) 疾患由来の人工多能性幹細胞 (iPS 細胞 ) を樹立し、それを解析することで疾病の原因・病態を解明し、治療薬を開発すること。

 

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