疾患由来iPS細胞資源バンク
難治性疾患(難病)からの iPS細胞の樹立とそれを利用した難病研究

 発生医学研究所では、幹細胞誘導分野の江良 択実 教授が中心となって、平成 21 年度から難治性疾患からの疾患由来の人工多能性幹細胞( iPS 細胞)の作製とそれを利用した難病研究を行っております。
難治性疾患(難病)は、その多くに遺伝性の疾患が含まれ発生医学の研究が原因解明、治療方法の開発に大きく役立ちます。しかしこれまでは、発生医学の研究成果を生かそうとしても、難病は患者数が限られるために生体試料(細胞、血液や DNA等)が非常に少なく、このことが研究を行う上で大きな障害となっていました。この問題点を疾患由来のiPS細胞を作ることで解決し、難病研究を進めています。
研究のテーマは大きく2つに分けられます。
①外来因子フリー難治性疾患由来iPS細胞の委託作製とそのバンク化の研究
②作製したiPS細胞を用いての難病の原因解明や新しい治療法・治療薬の開発

 

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1.外来因子フリー難治性疾患由来iPS細胞の委託作製とそのバンク化の研究
本研究の狙いは以下の2点です。
1) 疾患由来iPS細胞を医師の代わりに作成し、提供することで研究に役立て頂く。
2) 患者様と依頼医師の同意が得られたならばiPS細胞バンクへご協力していただき研究の発展を促す。

この研究は一言でいうと厚生労働省のサポートのもと臨床医師の方々が患者様よりiPS細胞を樹立する(研究のため、あるいは貴重な症例を保存するため等)時に、先生方のかわりに無料にてiPS細胞を作り、ご依頼があった先生方にお返しするという内容です。その際に患者様、依頼者の同意が得られましたら、作製したiPS細胞を将来のiPS細胞のバンク化にご協力していただくことをお願いしております。iPS作製にはいろいろな方法がありますが、センダイウイルスで作製する方法にて行っております。この方法は初期化因子が、染色体内に残らないので、疾患研究には現時点では最善の方法の1つです。事業は、厚生労働省難治性疾患克服研究事業の難治性疾患研究班の先生方とも連携して行っております。

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2.作製したiPS細胞を用いての難病の原因解明や新しい治療法・治療薬の開発
人工多能性幹細胞(iPS細胞)は、皮膚や血液から作製できるので、一部の例外を除き、ほとんどの病気から作製することができます。iPS細胞はその分化の多能性から、病気の標的細胞を誘導し、発症機序や治療法の開発へ利用できると期待されている細胞です。また、試験管内で分化能を維持したままで増幅でき、長期保存も可能です。したがって、患者数が限られるような難治性疾患からの研究にすぐれた効果を発揮すると考えられます。
発生医学研究所では、従来より、発生医学研究の1つのすぐれたツールとして胚性幹細胞(ES細胞)の分化を誘導しての研究が行われています。iPS細胞はこのES細胞に極めて似た特徴をもつ細胞です。したがって、ES細胞の研究から得られた成果は比較的容易にiPS細胞研究に利用することができます。他の発生医学研究から得られた成果も合わせて利用して、疾患由来iPS細胞を病気の標的細胞へ分化させて研究を行っております。

 

人工多能性幹細胞(iPS細胞)とは
人工多能性幹細胞(iPS細胞)は、患者様の少量の皮膚より皮膚線維芽細胞の培養を行い、その後、この皮膚線維芽細胞に4つの分子(Sox2, KLF4, Oct4, Myc)を加えることで、作ることができます。iPS細胞からは、試験管内でさまざまな細胞を作り出すことができ、またiPS細胞自身を試験管内で簡単に増幅して増やすことができます。iPS細胞作製が現時点で、すぐに治療法につながるものではありませんが、iPS細胞からいろいろな細胞を作り出して研究を行うことで病気の発症機序などを明らかし、さらに治療法の開発につながる研究へと発展させる可能性があると考えられます(下図参照)。

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○iPS細胞作成依頼方法(MS Word 487KB)

○難病研究資源バンク パンフレット(PDF 2MB)