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発生研内外の皆様へ 2016.4.19

2016.04.19 ●ニュース

発生研内外の皆様へ (2016.4.19)

 

熊本大学発生医学研究所は4/14の地震で大きな被害を受けました。しかしその後4/16未明に発生した本震は想像を絶するもので、電気、水、ガスのライフラインが断たれました。私自身も車内や避難所で夜を明かしました。メールへの返信やHPの更新もままならず、皆様にご心配をおかけしております。山中伸弥先生、近藤寿人先生、上野直人先生、濱田博司先生をはじめとする多くの先生方におかれましては、多大なご支援ありがとうございます。

 

現在熊本市には電気と水が戻りつつあります。幸い、研究関係者には人的被害はほぼ出ていません。人が最大の宝であり、それが無事であることに感謝しています。

 

発生研周囲の地面は波打ち、外壁タイルが剥がれ、内外壁には大きなひびがいくつも入っています。窓が歪み、漏水も起こりました。これらを見た時はショックでしたが、検査の結果、建物自体の倒壊の可能性は非常に低いだろうということで、安堵しています。余震による落下物のため、原則立ち入り禁止としていますが、中に入って復旧作業を再開しています。復旧には1年以上の時間と莫大な費用を要するでしょう。ですが、修復しながらでも、研究を再開することができます。

 

また、質量分析器、次世代シークエンサー、FACS、顕微鏡などの多くの機器が落下・転倒しています。余震の可能性があるため、これらは来週になってから元に戻し固定します。その上で専門の業者に機能を確認してもらうつもりです。そもそも空路も陸路も遮断されているので、業者が熊本入りするのは来週だろうと思います。これらの機器の修理費あるいは買い替えとなると、これまた大きな費用がかかります。発生研は全国共同研究拠点でもあり、全国の研究者を受け入れて、これらの充実した機器と熟練の研究支援者達からなるコアファシリティー「発生研リエゾンラボ研究推進施設」で支援してきました。これが近年の発生研自体の躍進の基盤にもなっており、一刻も早く復旧したいと願っています。

 

度重なる地震によって、発生研の水やガスは止まったものの、奇跡的に電気は安定して維持されました。フリーザー内のサンプル、つまり長年蓄積されてきた研究の財産は、失われることなく保たれています。

 

発生研に隣接する日本有数のマウス施設(生命資源研究・支援センター:管轄は発生研とは別組織です)は、電気、水、ガスともに保たれ、マウスは無事に生きています。また凍結胚も地下の液体窒素タンクに保存されており、損傷していません。これらもまた日本のサイエンスの財産であり、それが保たれたことにほっとしています。もちろんこちらの建物も発生研同様に破損しており、長期的修復が必要なことは言うまでもありません。

 

これらの状況は、あと一発の大きな余震によって大きく変わる可能性があることは念頭に置かねばなりませんが、私としては5月の連休明けには研究を再開したいと考えています。それまでに余震がおさまり、広域避難させた学生たちが戻ってくることを願っています。住居がひどく損傷した学生への長期的経済的支援は必須です。特に留学生は行き場がなく、自費で帰国するケースが相次いでおり、対策を急いでいるところです。やることは限りなくありますが、全力を尽くす所存です。今後ともご支援のほどよろしくお願いいたします。

 

熊本大学 発生医学研究所 所長

西中村 隆一

 

 

熊本大学の被害については こちら