分野紹介
組織幹細胞分野

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研究プロジェクト

造血発生分野では大きく分けて三つの研究テーマに取り組んでいます。一つめは中胚葉細胞の多様化のメカニズムを解明すること、二つめは造血幹細胞が発生するメカニズムを解明すること、そして三つめは血管系の高次構造が構築されるメカニズムを解明することです。胚性幹細胞(ES細胞)の試験管内分化誘導とフローサイトメトリーによる細胞の分離を主な研究手法として用いています。 

 

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(図1)ES細胞から中胚葉細胞系列への分化模式図

 

中胚葉細胞の多様化

ES細胞を特定の条件下で培養すると中胚葉細胞が発生します。この中胚葉細胞を分離してさらに培養すると、心筋細胞、血管内皮細胞、血管平滑筋細胞、血液細胞などに分化します。ES細胞から分化誘導した中胚葉細胞は細胞の運命決定(コミットメント)のプロセスを解析する良いモデルであるといえます。しかし、中胚葉細胞からそれぞれの細胞系列へのコミットメントの仕組みは必ずしも明らかではありません。多能性を持つ前駆細胞からそれぞれの細胞系列にコミットした前駆細胞にいたる様々な段階の前駆細胞を検出しその運命を実験的に制御することにより、中胚葉細胞が多様化するメカニズムの解明を目指しています。

 

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(図2)ES細胞から分化した血管内皮細胞コロニー
(VE-カドヘリン抗体による免疫染色像)

 

造血幹細胞の個体発生

骨髄で行われる造血は、多能性と自己再性能を持つ造血幹細胞を起点とする「幹細胞システム」の代表的な例として知られています。しかし、血液細胞系列の個体発生は造血幹細胞の発生から始まるわけではなく、限定された能力しか持たない血液前駆細胞が発生する中で、やがて造血幹細胞も生まれてきます。血液前駆細胞が発生するとき少なくとも二つの経路があることが明らかになっています。一つは中胚葉細胞から直接発生する経路、もう一つは血管内皮細胞から発生する経路です。これら異なったコンテクストで起きる血液前駆細胞へのコミットメントの仕組みを明らかにすることにより、造血幹細胞の多能性と自己再性能が成立するメカニズムの解明を目指しています。

 

血管形成の細胞生物学

血管は、脈管形成、血管新生、リモデリングなどの段階を経て発生します。その発生過程では様々な増殖因子や転写因子が働いています。これらの因子の多くは、血管が階層的な樹状構造を形成する血管新生以降の過程に必要であることが知られていますが、細胞レベルでの具体的な役割は明らかではありません。ES細胞から分化誘導した血管内皮細胞を特定の条件下で培養するとシート状のコロニーを形成します。この培養系は、様々な因子の血管内皮細胞レベルでの作用を解析する良いモデルとなります。個々の血管内皮細胞の振る舞いがより高次の構造形成に寄与する仕組みを明らかにすることにより、血管形成過程をドライブする細胞生物学的なメカニズムの解明を目指しています。