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所長挨拶 (2020.4.1)

2020.04.01 ●ニュース

熊本大学発生医学研究所 所長

丹羽 仁史

 

 

この度、発生医学研究所所長に就任することになりました、多能性幹細胞分野の丹羽と申します。何卒よろしくお願い申し上げます。

 

私は1989年に熊本大学医学部大学院に入学し、発生医学研究所の前身である遺伝医学研究施設・山村研一教授の指導を受けました。当時から熊本大学の遺伝医学研究施設や免疫医学研究施設は、若手の育成施設として全国的に知られており、またマウス発生工学の中心地でもありました。1993年に学位取得後は、1年間助手として在籍後英国に留学し、多くの方がご存知の通りの紆余曲折を経て、2015年に発生医学研究所の教授として着任しました。着任後6年目で所長職を拝命するとは、全く予想しておりませんでしたが、全力で職責を全うしたいと思います。

 

では、何をするのか?昨今、日本では、基礎研究活力の低下が危惧されています。これは、大学の法人化、研究費配分のあり方や、若手研究者の地位の不安定化、研究者の意識の変化など、様々な要因がその根底にあると考えられます。これらの問題を個別に根本的に解決していくことは、一研究機関がどうあがいても、できることではありません。かといって、取り巻く状況が悪化しているのだからどうしようもないと諦めても仕方がありません。我々研究者は、それぞれの意識において、自らの最善を尽くし、その知的好奇心を動機として、細やかながらも確固たる知識のかけらを、これまでの科学知識体系に積み上げていくしかないのです。研究所としては、このような個別の健全な科学研究を推進できる環境を整備し、科学的交流の場を設定して議論を活発化させ、得られた知見を適切な形で一般社会へと告知する、そして次世代の人材を育成する、こういう当たり前のことをしっかり運営していくことが基本と考えます。

 

しかし、これだけでは些か物足りません。これまでの日本の大学に欠けているものとして、国際交流がしばしば指摘されます。研究者は、常に世界の情報を受け取り、自らの研究成果を世界に向けて発表しなければならないのですから、自ずから国際交流は行われているといえます。しかし、欧州や米国の研究者社会からは、日本の研究者の顔は見えにくいと指摘されます。彼らは、特に意識するでもなく、自然と研究集会などで顔をあわせる機会が多く、共同研究などの公的な連携とは関係なく、密な繋がりを形成して情報を交換し、研究を加速させています。しかし、このような自然な流れにうまくなじんでいる日本の研究施設はほとんどありません。これは、距離という物理的障壁だけでなく、なにか精神的障壁があるようにも思われます。このような障壁を取り外し、日本の研究者がもっと自由に海外研究者と交流できる雰囲気を醸し出していくことは、研究所の目標の一つとしたいと思います。それは欧米にとどまらず、アジアその他の研究機関との連携においても同じであり、発生医学研究所が直接世界をつなげる接点の一つになれれば、それほど素晴らしいことはありません。

 

そのためには、発生医学研究所から、世界に認められる研究成果を発信し続けなければなりません。研究所員の皆様には、これからも鋭意努力いただきますとともに、研究所外の方々におかれましては、何卒ご支援のほどをお願いいたします。

 

2020年4月