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分  野生殖発生分野
掲載日2009年 6月 23日
タイトル
Wnt/β カテニンは生殖器官の性差を制御するエフェクター分子である

Shinichi Miyagawa, Yoshihiko Satoh, Ryuma Haraguchi, Kentaro Suzuki, Taisen Iguchi, Mark Makoto Taketo, Naomi Nakagata, Takahiro Matsumoto, Ken-ichi Takeyama, Shigeaki Kato and Gen Yamada. Genetic interactions of the androgen and Wnt/ β -catenin pathways for the masculinization of external genitalia.

Molecular Endocrinology 23: 871?880, 2009

  高等ほ乳類にとって生殖器官系の雄型雌型の性分化は最も重要な器官形成プログラムの一つでありながら、「局所的に発現する」細胞増殖因子群がアンドロゲンなどのホルモンシグナルと共に生殖器官の性分化にいかに作用しているか、まだほとんど理解されていない。それらの因子群は、エフェクター分子と呼ばれているが、これまで発生医学的にその実体は十分捉えられていなかった。今回、生殖発生分野(山田 源教授;旧 CARD技術開発分野)の宮川信一博士(COEリサーチアソシエイト)らは、遺伝子改変マウス解析を駆使することによって、Wnt/βカテニンシグナルが生殖器官の雄雌の性分化の形成に重要であること を明らかにした。宮川らは、まず細胞増殖因子シグナルとして重要なWnt/βカテニンシグナルの変異体、およびそのシグナルを恒常的かつ過剰に発現するマウスを解析した。その結果、Wnt/βカテニンシグナルが尿道形成や外生殖器伸長に重要であること、さらに外生殖器の雄型雌型の分化にも関与していることが初めて明らかとなった。続いて、マイクロアレイを用いて雄型雌型の生殖器において発現が変化する細胞増殖因子群遺伝子をスクリーニングした結果、雌型の外生殖器間葉組織においてWnt/βカテニンシグナルのインヒビターであるDkk2遺伝子の発現が亢進していることが判明した。さらに、Wnt/βカテニンシグナルの胎児外生殖器における過剰な発現、あるいはその変異により、胎児外生殖器の雄型雌型の分化に異常が起こることが判明した。以上のことから、Wnt/βカテニンシグナルが生殖器官の性差を制御するエフェクター分子であることが明らかとなった。本研究成果は、 Molecular Endocrinology誌6月号に掲載された。

 

np34図  Wnt/βカテニンシグナルの改変によって外部生殖器に性転換が生じる