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分  野器官制御分野(現・細胞医学分野)
掲載日2006 年 8月 24日
タイトル
SUMO化修飾の細胞核構造における役割が新しい可視化法で明らかになった

Noriko Saitoh, Yasuhiro Uchimura, Taro Tachibana, Satoko Sugahara, Hisato Saitoh and Mitsuyoshi Nakao (2006). In situ SUMOylation analysis reveals a modulatory role of RanBP2 in the nuclear rim and PML bodies. Exp. Cell Res. 312, 1418-1430.

 翻訳後修飾タンパク質 SUMOは、核内構造体タンパク質、ヒストンを含むクロマチンタンパク質、シグナル伝達因子等様々な因子を修飾し、多くの生命活動の制御に重要な役割を果たす。細胞核内は高度に分画化され、PMLボディ、核小体、核膜等数々の構造体が存在し、それらがダイナミックに変動しながら機能しており、これらの構造体がエピジェネティックな制御も含めて遺伝子の活性調節に働くことが示唆されてきている。SUMOの核内分布はすでに明らかにされているが、それがSUMO化活性の場を反映しているのか、単にSUMO分子の会合を反映しているのか明らかになっていない。器官制御分野(中尾光善教授)の斉藤典子助手らは、今回 in situ SUMOylationアッセイ法というセミインタクト細胞を用いて細胞内でのSUMO化を可視化する新規かつ効率的な手法を開発し、SUMO化が細胞内で時空間特異的に調節されている機構とその影響を解析した。その結果、核膜孔やPMLボディ・核小体に高度なSUMO化活性が存在し、分裂期にはセントロソーム等の分裂装置も活発なSUMO化の場であることを見いだした。次に、SUMO化のタイミングと基質の選択を司るSUMO E3タンパク質の一つであるRanBP2/Nup358をsiRNAの手法でノックダウンしたところ、核膜孔での活発なSUMO化活性はRanBP2に依存することを見いだした。つまり、本方法はSUMO E3タンパク質が局在し、役割を果たしている場を可視化している。興味深いことに、RanBP2のノックダウンにより、PMLボディなどの特定の核内構造の形成が不全になった。これらの結果より、RanBP2による核膜孔でのSUMO化は基質タンパク質が核膜孔を通過するプロセス、あるいはその後の特定の核内部位へのターゲッティング等に役割を果たし、核内構造体の形成と遺伝子発現制御などに関わっていることを提唱した。この研究成果は、Exp. Cell Res.誌5月1日号に発表された。

 

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図:細胞核内構造体形成における SUMO化修飾の役割。

(上) in situ SUMOylation アッセイ法は、核膜孔が活発なSUMO化の場であることを示した。

(下)SUMO E3タンパク質RanBP2のノックダウンでSUMO化活性の消失とPMLボディの形成不全が引き起こされた。