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分  野臓器形成分野(現・個体発生担当)
掲載日2006 年 8月 22日
タイトル
Danforth's short tail マウスの原因遺伝子座近傍に位置する椎間板発生に必要な新規遺伝子 Sickle tail ( Skt ) の解析

Kei Semba, Kimi Araki, Zhengzhe Li, Ken-ichirou Matsumoto, Misao Suzuki, Naoki Nakagata, Katsumasa Takagi, Motohiro Takeya, Kumiko Yoshinobu, Masatake Araki, Kenji Imai, Kuniya Abe, Ken-ichi Yamamura (2006) A novel murine gene, Sickle tail , linked to the Danforth’s short tail locus, is required for normal development of the intervertebral disc. Genetics 172, 445-456.

 脊椎動物にとって、脊椎の形成は死活問題である。その脊椎は、椎体と椎間板からできており、椎間板はさらに中央にある髄核と周囲の線維輪とからできている。脊椎の形成には脊索という組織が重要な役割を果たしている。発生学的に面白いのは、(1)脊索が硬節の発生を誘導し、(2)その硬節から椎体と線維輪が発生するが、髄核は脊索そのものから発生すること、である。つまり、髄核と線維輪はともに椎間板という組織の形成に与りながら、起源が異なる。起立歩行を行う人間では、椎間板は力学的な圧力を逃がすためのクッションの役割を果たしており、医学において高齢化に伴う椎間板の変性が解決すべき重要課題となってきている。臓器形成分野(山村研一教授)の仙波らは、遺伝子トラップ法により、尾椎の変形を持つマウス( SktGt )を樹立し、その原因となる新規マウス遺伝子 Skt を同定した。この Skt 遺伝子は、胚期では脊索及び中腎、成体では、椎間板髄核特異的に発現しており、尾椎の変形は椎間板髄核の縮小及び消失によることが分かった。また、興味深いことに、 Skt 遺伝子の遺伝子座は、脊椎発生に異常を示し、その原因遺伝子がまだ不明な Danforth’s short mouse ( Sd ) の遺伝子座の近傍にあることがわかった。 Sd 、 Skt Gt の二重変異マウスを作製したところ、椎間板のみならず、椎体も消失し、下位から上位にかけての脊椎全体の消失を伴うことが分かった。 これらの結果は Skt 遺伝子が椎間板の発生に関与しているだけでなく、その遺伝子座近傍に位置する Sd の原因遺伝子とともに椎体も含む脊椎形成に関与していることを示している。 この研究は Genetics 誌1月号に掲載された。今後、 Sd 遺伝子の探索と、これらの遺伝子の分子レベルでの作用機構の解明により、椎間板変性疾患の新しい治療法の開発に寄与できると期待される 。

 

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上段:11.5日胚におけるSkt発現パターン。中腎中胚葉において発現している。

中段:尻尾の肉眼所見。Sktでは、尾椎で屈曲し、Sdでは断裂している。

下段:組織像。胸椎では、Sktは正常、Sdでは髄核が消失している。尾椎では、Sktでは髄核が変性し周辺に偏在している。 Barは、200μm.