ニュープレス

⇒NewPress一覧へ

分  野細胞複製分野(現・分子細胞制御分野)
掲載日2006 年 5月 12日
タイトル
線虫に存在する 2 種類の p97 は異なる発現制御を受けている

eiji Yamauchi, Kunitoshi Yamanaka, and Teru Ogura (2006) Comparative analysis of expression of two p97 homologues in Caenorhabditis elegans . Biochem. Biophys. Res. Commun. (online May 5, 2006 )

 AAA ファミリータンパク質は、全ての生物に普遍的に存在し、基質タンパク質の高次構造をエネルギー依存的に変換する分子シャペロンである。代表的な AAA タンパク質の 1 つである p97 (または VCP 、酵母では Cdc48p )は、タンパク質分解(小胞体関連分解など)、細胞周期の調節、膜融合、アポトーシスおよび転写調節など多くの細胞機能に関与している。また p97 は、骨パジェット病と前側頭葉型痴呆を伴う封入体筋炎の原因因子として同定され、さらにポリグルタミン病との関連も示唆されるなど、ヒト疾患の病因・病態解明の点からも注目を集めている。   ヒトやマウスは 1 種類しか p97 をもっていないが、線虫はなぜか 2 種類の p97 ( CDC-48.1 と CDC-48.2 )を持っている。細胞複製分野(小椋 光教授)の山内清司研究員らは 2 種類の p97 の発現パターンを詳細に解析し、各 p97 の発現量および発現部位の違いが、異なる表現型を示す要因の 1 つであることを明らかにした。おもな知見は以下の 3 つである。 (1)  CDC-48.1 の mRNA およびタンパク質の量は CDC-48.2 の約 2 倍であった。 (2)  緑色蛍光タンパク質( GFP )との融合タンパク質を用いた解析により、 CDC-48.1 は各生育段階において体全体で発現しており、特に貯精嚢で顕著な発現が認められた。一方、 CDC-48.2 は胚時期でのみ発現していた(図)。 (3) 2 種類の p97 ともに小胞体ストレス下で発現誘導されたが、誘導条件は異なっていた。 CDC-48.1 の貯精嚢での顕著な発現に関連して、 CDC-48.1 を欠損した線虫では、生育速度が遅く、精子の数が少ないという表現型が見られることは興味深い。以上の結果は、 2 種類の p97 が異なる発現制御を受けていることを意味しており、 2 種類の p97 の機能分化に関連し、遺伝子発現制御の観点から今後の詳細な解析が待たれる。この研究成果は Biochem. Biophys. Res. Commun. 誌に 5 月 5 日付けでオンライン先行発表された。

 

np04

図: GFP 融合タンパク質を用いた 2 種類の p97 の発現部位の解析

右が位相差顕微鏡写真、左は GFP の蛍光を観察したものである。 CDC-48.1 は体全体で発現しており、特に貯精嚢で顕著な発現が見られる(白矢尻)。一方、 CDC-48.2 は胚(白矢尻)以外ではほとんど発現が見られない。