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分  野造血発生分野(現・組織幹細胞分野)
掲載日2006 年 4月 14日
タイトル
血液細胞発生の各ステップで転写因子 c-Mybの適切な発現量が決められている

Hiroshi Sakamoto, Guoyou Dai, Kaori Tsujino, Kazuaki Hashimoto, Xin Huang, Tetsuhiro Fujimoto, Michael Mucenski, Jon Frampton, and Minetaro Ogawa (2006) Proper levels of c-Myb are discretely defined at distinct steps of hematopoietic cell development. Blood (online April 4, 2006)

 胎生期の血管内皮細胞は多様な成体型血液細胞を生み出す能力を持っている。この成体型造血に必要な転写因子の一つとして c-Mybが知られている。造血発生分野(小川峰太郎教授)の坂本助手らは、血管内皮細胞から血液細胞への分化におけるc-Mybの詳細な機能解析を行った。c- myb 遺伝子を欠損するマウスES細胞から試験管内で内皮細胞を分化させる実験系を用い、テトラサイクリン(Tet)依存的に外来性のc- myb 遺伝子の発現誘導を行うことにより、c-Mybの発現量を各分化段階で任意に調節することを可能にした。その結果、発生期の内皮細胞におけるc-Mybの発現は血液細胞への分化決定には必要ないが、発生した血液前駆細胞の分化・増殖には必要であることを明らかにした。さらに、c-Mybの強制発現は顆粒球やマクロファージの分化には影響を与えないが、赤血球や巨核球の成熟分化を抑制し、Bリンパ球の発生をごく初期の段階から阻害することを見いだした。c-Mybは幼弱な血液細胞の増殖や分化を調節する重要な転写因子であり、その適切な発現量は血液細胞の系列とその分化段階によってそれぞれ異なることを明らかにした。この研究成果は、Blood 誌に4月4日付けでオンライン先行発表された 。

 

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図:血液細胞の分化段階と c-Mybの発現量

 

通常の血液細胞分化では c-Mybの発現量は適切に調節されるが、c-Mybの強制発現は血液細胞の成熟分化を抑制する。