Takashi Okuno, Kunitoshi Yamanaka and Teru Ogura (2006) An AAA protease FtsH can initiate proteolysis from internal sites of a model substrate, apo-flavodoxin. Genes Cells 11, 261-268.
ATP 依存性のプロテアーゼは、 ATP 加水分解のエネルギーを使って基質タンパク質をほどき、ほどけたポリペプチド鎖のいずれかの末端からプロテアーゼチャンバーの内部に送り込んで、逐次的に分解する。細胞複製分野(小椋 光教授)の奥野貴士研究員らは、 AAA タイプの ATP 依存性プロテアーゼ FtsH の分子機構をフラボドキシンをモデル基質として解析した。フラボドキシン( Fld )は補酵素 FMN を結合してホロ酵素になる。奥野らは、 FtsH が、フラボドキシンホロ酵素は分解しないが、アポ酵素を分解することを見出し、分解の方向性を解析するため、それ自身基質として認識されないグルタチオン S トランスフェラーゼ( GST )や緑色蛍光タンパク質( GFP )との融合タンパク質を構築し、それらの分解を詳細に調べた。その結果、 FtsH は、フラボドキシンの立体構造をほどき、内部のポリペプチド鎖ループを、 ATP 加水分解に依存してリング状の ATPase ドメインを通過させ、プロテアーゼチャンバーに送り込むことが明らかとなった(図)。タンパク質分解の開始にポリペプチド鎖の末端が必ずしも必要でないことを示し、 ATP 依存性プロテアーゼの分子機構に新たなモデルを提唱した。この研究成果は、 Genes Cells 誌の 3 月号に発表された。
図: FtsH による GST-FldYD-GFP 融合タンパク質の分解の開始
FldYDは、 FMN の結合に重要なアミノ酸残基に変異をもつフラボドキシンで、アポ酵素として存在する。 FtsH の基質にならない GST と GFP に挟まれたフラボドキシンがほどかれ、 ループが FtsH プロテアーゼの内部に入って、分解が開始する。