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分  野細胞複製分野(現・分子細胞制御分野)
掲載日2007 年 1月 11日
タイトル
線虫の RBX-2-CUL-5 複合体と RBX-1-CUL-2 複合体は、 MAP キナーゼの活性化において重複した機能を持ち、卵母細胞形成を制御する

Yohei Sasagawa, Shusei Sato, Teru Ogura, and Atsushi Higashitani (2007) C. elegans RBX-2-CUL-5- and RBX-1-CUL-2-based complexes are redundant for oogenesis and activation of the MAP kinase MPK-1. FEBS Lett. 581, 145-150.

 Rbx-Cullin 型複合体は、多細胞真核生物で高度に保存されているユビキチンリガーゼで、細胞周期をはじめ発生・分化、シグナル伝達など幅広い細胞機能に関与する。線虫 C. elegans で Cullin ファミリータンパク質は 6 種類存在し、 cul-1, -2, -3, -4 の細胞機能は報告されているが、 cul-5, cul-6 はノックダウンしても表現型が現れず、細胞機能は全く未知であった。細胞複製分野(小椋光教授)の笹川洋平研究員らは、東北大学生命科学研究科のグループ(東谷篤志教授)と共同で、 cul-5 と cul-2 の興味深い遺伝的相互作用を見いだした。   野生型において、 RNAi により cul-5 をノックダウンしても、表現型は現れないが、 cul-2 変異体においてノックダウンすると全く卵母細胞を作らず不妊になった。また CUL-5 と強い結合が観察された Ring-H2 finger タンパク質の RBX-2 をノックダウンしても、同様の表現型が観察された。この表現型は、卵母細胞形成に関与する ERK 型 MAP キナーゼの mpk-1 変異体でも観察される。事実、 cul-5 をノックダウンした cul-2 変異体で、 MPK-1 の活性は 1/5 以下になっていた。これらの結果は、 RBX-2-CUL-5 複合体と RBX-1-CUL-2 複合体が、 MAP キナーゼの活性化において重複した機能を持ち、卵母細胞形成を制御することを強く示唆した。この研究成果は、 FEBS Lett. 誌 1 月号に発表された。

 

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図:cul-5 を RNAi によりノックダウンした cul-2 変異体では、活性型 MPK-1 ( p2-MPK-1 )のシグナルが劇的に低下した。それぞれ単独の機能抑制では、野生型( N2 )と同じレベルでシグナルが観察された。また cul-5 をノックダウンした cul-2 変異体では活性型シグナルは低下したが、非活性型 MPK-1 ( MPK-1 )のシグナルは低下しなかった。 mpk-1 をノックダウンすると両方のシグナルが低下した。