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分  野細胞複製分野(現・分子細胞制御分野)
掲載日2006 年 11月 8日
タイトル
大腸菌 AAA プロテアーゼ FtsH の中央の孔周辺の変異体の解析

Takashi Okuno, Kunitoshi Yamanaka, and Teru Ogura (2006) Characterization of mutants of the Escherichia coli AAA protease, FtsH, carrying a mutation in the central pore region. J. Struct. Biol. 156, 109-114

 大腸菌の FtsH は、 AAA ファミリーに属する膜結合型 ATP 依存性プロテアーゼであり、細胞質の制御タンパク質や会合に失敗した膜タンパク質を分解し、細胞機能の調節やタンパク質の品質管理をする。 FtsH などの ATP 依存性プロテアーゼは、基質タンパク質をほどき、プロテアーゼドメインの内部に送り込んで分解すると考えられている。細胞複製分野(小椋 光教授)の奥野貴士研究員(現:京都薬科大助手)らは、その仕組みについて解析した。同研究室の先行論文( J. Biol. Chem., 2003 )において、 FtsH の 6 量体 ATPase リングの中央の孔を構成する保存されたモチーフ、 @XG ( @ は芳香族残基、 X はどの残基でもよい、 G はグリシン)の芳香族残基 Phe228 が基質分解に、 Gly230 が基質分解と ATP 加水分解の共役に重要であることを報告していた。今回、奥野らは中央の孔周辺の変異体をさらに分離し、いくつかの酸性残基( Glu273, Glu226, Asp223 )も FtsH の機能に重要であること、変異体のプロテアーゼ活性は、多くの場合 ATPase 活性と相関があること、 @XG モチーフの 2 番目の残基 Val229 が基質特異的役割を持つことなどを明らかにした。この研究により、 AAA ATPase リングの中央の孔の重要性と基質分解過程における役割の理解が深まった。この研究成果は、 J. Struct. Biol. 誌 10 月号に発表された。

 

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図 : FtsH ATPase リングの中央の孔の構造。 (A) 中央の孔を構成する残基。 Phe228 をオレンジで、酸性残基を赤で、その他の残基を灰色で示す。数字はアミノ酸番号。 (B) 6 量体 ATPase 全体の構造。色は、塩基性残基を青で示すほかは (A) と同じ。孔の入口と内部を拡大して横に示す。