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[発生研セミナー] 12月18日16:00~ 慶應大 秋山智彦先生

2017.12.06 ●セミナー

第322回発生研セミナー

 

転写因子導入によるヒト多能性幹細胞の分化誘導の自在化を目指して

 

特任助教 秋山 智彦 博士

慶應義塾大学医学部 坂口記念システム医学講座

 

日 時: 平成29年12月18日(月)16:00~17:00
場 所: 発生医学研究所 1階カンファレンス室

 

 

近年、ヒトES/iPS細胞の分化誘導を促進させるために分化制御に関わる転写因子を強制発現させる研究が国内外で盛んに行われている。この分化誘導法の優れた点は、転写因子の発現操作を介して遺伝子発現パターンを目的の細胞へ直接転換させるため最終分化までの期間が短く均一な分化細胞を得られるところである。しかしながら、多能性幹細胞には高い未分化維持性が存在し、たとえ分化制御に関わる転写因子を過剰発現しても、下流の遺伝子ネットワークが構築されにくいという問題点もあった。事実、繊維芽細胞を骨格筋へと形質転換させるマスター転写因子MYOD1の導入による分化誘導にすらヒトES/iPS細胞は高い抵抗性を示す。「分化」とは「未分化維持性の消失」ともいえる。ヒト多能性幹細胞の未分化性はOCT4を含む転写因子ネットワークやBivalent修飾クロマチン構造によってシス・トランス両面から頑強に維持されている。本セミナーでは、これらの分化バリアーを迅速に取り除くことにより、転写因子導入によるヒトES/iPS細胞の分化誘導を顕著に促進できた研究成果を紹介するとともに、その分化制御のメカニズムについても議論したい。

 

【参考文献】
Akiyama, T. et al. Epigenetic Manipulation Facilitates the Generation of Skeletal Muscle Cells from Pluripotent Stem Cells. Stem Cells Int. 2017:7215010.
Akiyama, T. et al. Transient ectopic expression of the histone demethylase JMJD3 accelerates the differentiation of human pluripotent stem cells. Development 2016, 143: 3674-3685.

 

 

連絡先: 染色体制御分野 石黒 啓一郎 (内線6606)