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8月23日発生研セミナーを開催しました

2016.08.22 ●ニュース

第277回発生研セミナー

 

生殖幹細胞の増殖を制御するショウジョウバエの神経-内分泌基盤

 

丹羽 隆介 准教授
筑波大学 生命環境系

 

日時:平成28年8月23日 (火) 15:00~16:00
場所:発生医学研究所 1階カンファレンス室

 

 

幹細胞は、多分化能を維持したまま自己複製的な分裂を行う一方で、分化した娘細胞を継続的に供給することができる細胞である。幹細胞が個体において安定的に維持されることは生体の恒常性や組織の維持にとって必須であり、そのメカニズムの解明は基礎科学のみならず医学においても重要視されている。これまでの研究から、幹細胞の数が個体の生理状態や個体を取り巻く外環境状態によって影響される事例が知られている。これらの個体内外の状態は神経系あるいは内分泌系を介して幹細胞に伝えられることが容易に想像されるが、その実態を分子レベルおよび細胞レベルで解明した研究はいまだ少ない。
我々は、キイロショウジョウバエ Drosophila melanogaster の生殖幹細胞をモデル系として、上述の問題に取り組んでいる。最近我々は、ショウジョウバエのメスの生殖幹細胞の増殖が交尾刺激によって促進されること、そしてこの反応にはオス精液成分によって活性化される神経経路とその下流で活性化する昆虫ステロイドホルモン生合成系が必須であることを報告した[Ameku and Niwa (2016) PLOS Genetics 12: e1006123]。我々は現在、この発見を足がかりとして、メス生殖幹細胞の数に影響を与える神経伝達物質やホルモンを半網羅的に探索している。本講演では、主に遺伝学的解析と生理学的解析によって得られた最新のデータを紹介し、メス生殖幹細胞の増殖を制御する神経—内分泌基盤について議論する。

 

 

演者は、本年度の「発生医学の共同研究拠点」事業の共同研究に採択されています。

 

連絡先:生殖発生分野  中村 輝 (内線6557)