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戦略的創造研究推進事業(さきがけ)に佐藤有紀さん(大学院先導機構)の研究が採択されました

2013.10.03 ●ニュース

戦略的創造研究推進事業(さきがけ)「細胞機能の構成的な理解と制御」に「血流による血管ネットワークの制御と再現」(研究代表:佐藤有紀・大学院先導機構 発生・再生医学分野)が採択されました。

 

血管は、中枢から末梢へ向かって分岐を繰り返し、末梢部では細かい網目状のネットワークを形成します。中枢の太い血管から末梢血管まで、血流量に対応した階層的な循環網と役割分担が確立されています。毛細血管は、損傷を受けてもすぐに再生あるいは迂回路を作ることができるその一方で、このような末梢血管の可塑性こそが、腫瘍近傍に新たに血管を呼び込むことにつながり、ガン細胞の増殖・浸潤の危険性を高める要因にもなっています。また、近年の胚性幹細胞の分化誘導メカニズムの解明やiPS細胞の発明、組織工学技術の発展によって、実現可能性が高まりつつある組織の再建研究では、培養条件下の未熟な組織に機能的な血管網をいかにして呼び込むかが重要な課題です。このような背景から、血管形成の制御に直結するような研究・技術開発が喫緊の課題となっています。

 

血管ネットワークの階層構造は、脊椎動物胚の発生過程でも観察することができます。特にニワトリやウズラ等の鳥類胚は、卵黄上によく発達した卵黄嚢血管を作ります。卵殻外培養法を用いれば、生体内における血管形成過程をリアルタイムで観察することが可能です。本研究では、ウズラ胚血管網への高いアクセッシビリティーを利用し、体内を循環する血流を実験的な操作を行い、血管形成のしくみを理解します。そのために、血流の構成的変化(流量・粘度・血球数等)と血管内皮細胞の挙動との相関について、イメージング・定量解析から基礎的な知見を積み上げ、血流の役割を詳細にします。これをもとに、血管パターンを変えうる必要十分な要素を導きだし、生体内での血流操作によって血管ネットワーク形成過程の制御を試みます。さらに、この過程を計算機によるシミュレーションで再現し、血管網の形成過程における血流の役割を理解します。本研究の最終目標は、血流に含まれる要素を変化させることにより、血管ネットワークパターンを自在に操ることができるin vivoおよびin silicoのモデルを確立することです。

 

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