Yuki Murayama, Teru Ogura, Kunitoshi Yamanaka (2015) Characterization of C-terminal adaptors, UFD-2 and UFD-3, of CDC-48 on the polyglutamine aggregation in C. elegans.Biochem. Biophys. Res. Commun. 459: 154-160
AAAタンパク質ファミリーの1つp97(線虫ではCDC-48、ヒトではVCP)は様々な細胞機能に関与することが知られているが、その多機能性はp97と基質を仲介するアダプタータンパク質によって規定されると考えられている。
今回、分子細胞制御分野(小椋 光教授)の村山佑樹(博士課程大学院生)らは、線虫CDC-48のC末端に結合するアダプタータンパク質UFD-2、UFD-3について機能解析を行い、生理的条件下ではCDC-48とUFD-3が安定的な複合体を形成すること、またUFD-3が神経変性疾患に関わるポリグルタミン凝集体形成に関与する因子であることを明らかにした。
UFD-2とUFD-3はCDC-48への結合に関して酵母では競合することが知られているが、線虫においてはUFD-3がCDC-48と安定な複合多を形成していることを明らかにした。さらにポリグルタミン(polyQ40::GFP)発現線虫にCDC-48 C末端アダプターの欠失変異を導入するとufd-3 欠失変異株において顕著なポリグルタミン凝集体の減少が観察されたが、ufd-2 欠失変異株においては差が無かった(図)。次に、これらの変異株の寿命・運動能を測定した結果、凝集体の減少が見られたufd-3 欠失変異株において顕著な寿命短縮、運動能低下が観察された。ポリグルタミン凝集体の毒性に関して、凝集体そのものよりもその形成過程で生じる中間体オリゴマーの方が毒性は高いという報告があり、今回の結果はそれを支持するものであった。すなわち、CDC-48-UFD-3複合体はポリグルタミンの凝集体形成を促進し、ポリグルタミンの毒性を軽減していると考えられる。これらの研究結果は2015年3月Biochem. Biophys. Res. Commun. 459巻1号に掲載された。
図:ポリグルタミン(polyQ40::GFP)発現線虫における凝集体形成の観察。
蛍光顕微鏡下で観察される凝集体形成の様子(A)と凝集体数の比較(B)。