T. Koga, F. Sasaki, K. Saeki, S. Tsuchiya, T. Okuno, M. Ohba, T. Ichiki, S. Iwamoto, H. Uzawa, K. Kitajima, C. Meno, E. Nakamura, N. Tada, Y. Fukui, J. Kikuta, M. Ishii, Y. Sugimoto, M. Nakao, T. Yokomizo. Expression of leukotriene B4 receptor 1 defines functionally distinct DCs that control allergic skin inflammation. Cell. Mol. Immunol. (in press)
doi: https://doi.org/10.1038/s41423-020-00559-7
公開サイト:https://www.nature.com/articles/s41423-020-00559-7
順天堂大学大学院医学研究科 生化学・細胞機能制御学の横溝岳彦 教授、熊本大学発生医学研究所 古賀友紹 助教(順天堂大学 非常勤講師)らの研究グループは、九州大学、大阪大学との共同研究により、生理活性脂質ロイコトリエンB4*1の受容体BLT1を発現し、アレルギー性皮膚炎を悪化させる樹状細胞*2集団(BLT1hi DC)の同定に成功しました。また、この樹状細胞集団が、一般的な樹状細胞とは異なり、リンパ節に移行せずに炎症部位に留まり、T細胞を炎症性のTh1細胞へと分化させて、接触性皮膚炎の症状を増悪させることを明らかにしました。この研究結果は、アレルギー性皮膚炎などの新規予防・治療法の開発につながる成果です。本研究は、免疫学の国際誌 Cellular & Molecular Immunology オンライン版 (2020年10月9日) に発表されました。
本研究成果のポイント
図2:本研究により明らかになったBLT1陽性樹状細胞集団によるアレルギー性皮膚炎増悪のメカニズム
BLT1陰性の樹状細胞がリンパ節へ移行してIL-2の産生を介してT細胞増殖を誘導するのに対して、BLT1陽性の樹状細胞は炎症部位へ留まりIL-12の産生を介して炎症性のTh1細胞を分化誘導し(免疫ブースト)、アレルギー性皮膚炎を増悪する。炎症部位には多くの好中球が存在し、これらがロイコトリエンB4(LTB4)を産生していると考えられる。
用語解説
*1 生理活性脂質ロイコトリエンB4: ロイコトリエンB4は生体膜から切り出されたアラキドン酸から産生される特殊 な“あぶら”です。これは細胞膜上の受容体BLT1に結合・作用し、多様な生理活性を発揮します。BLT1は、 本研究の責任者である横溝岳彦教授により同定された分子で、炎症・免疫反応を促進することがわかってきています。さらに近年、X線構造解析にも成功したことから、創薬標的として注目されています。
*2 樹状細胞(DC) : 免疫応答の司令塔となる細胞。樹状細胞は、皮膚などの外界と接する末梢組織で抗原に暴露され、近傍のリンパ節に移行し、T細胞に抗原提示を行い分化・増殖を誘導します。分化したT細胞は炎症部位へと移行し、抗原の排除を行います。一方で樹状細胞は、大量のサイトカインを産生し、T細胞の特異的な分化(Th1、Th2、Th17など)を促進します。