国際先端研究拠点
国立大学法人熊本大学 国際先端研究拠点
学術集会参加報告 2013年度

 

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学会参加報告

 

発生医学研究所 腎臓発生分野 博士課程4年 太口敦博
(CDB Symposium 2014 Regeneration of Organs: Programming and Self-Organization)
March 10- 12,2014 RIKEN Center for Developmental Biology (CDB), Kobe, Japan

 

今回の学会は“Regeneration of Organs”と題して様々な角度からの臓器再生研究の成果が発表された。初日の前半においてはAxolotlやプラナリアを用いた、本来成体になっても高い再生能力を持つ生物の、体細胞再生のメカニズムについての話が多く発表された。Axolotlの四肢再生においては、上皮細胞と神経からのシグナルが重要であることがこれまでに明らかになっていたが、この過程を少なくとも特定のBmpとFgfの組み合わせによって一部再現できることや、さらにまだ神経から分泌されているであろうシグナルは未知であることが示されていた。また哺乳類に比べ比較的に近いと考えらえるXenopusにおいては、Axolotlと異なり、spike上の肢は再生されるが、指までは再生されない。このXenopusのblastemaでは四肢の再生の過程で重要であると考えられるShhがAxolotolと異なり発現しておらず、Shhのアゴニストを加えることによって一部指様の構造が再現された。さらに、Xenopusでは四肢切断後もShh遺伝子座におけるメチル化が起こっていたことなどから、進化の過程でShhがエピジェネティックな制御を受けることにより指の再生能を失うという形質変化をもたらしている可能性が示された。
また心筋の領域では、マウスの生直後の心筋細胞にも一部、増殖・再生能力があることなどに着目し、それが成体の心筋と比べてG1フェーズのCDKであるCDK4を活性化するCyclin D1が強く発現していることを見出し、それを過剰発現することで成体のマウスでも心筋の細胞周期に再入することを示していた。さらに、心尖部の再生過程において惹起されるSWI/SNFのchromatin remodeling complexに着目したグループからは、Baf60cを強制発現させることで生後2週目のマウスでも心尖部の再生が得られることが報告されていた。また、胎児の発生過程において中腎や内耳の内リンパ嚢一部の臓器において細胞死が誘導され、排除されるメカニズムについての解析では、これまでよく知られているapoptosisではなくsenescenceの関与について報告されていた。このsenescenceの過程においては、通常apoptosisの場合と異なりp53非依存性、p21依存性に、さらにTGF-β/SMADシグナルならびにPI3K/FOXOパスウェイを介していることが示されていた。このp21を欠失させるとapoptosis機構が代償的に働くことも観察された。さらに、演者らはこのようなsenescenceを介して傷害を受けた細胞が排除されるメカニズムが大人の病気の際にうまく働かないことによって慢性炎症へとつながるのではないかという視点で考察していた。その他、多能性幹細胞からの各臓器細胞への誘導については、神経系への分化誘導から派生して内耳の有毛細胞とさらにそこへ接続する感覚神経を同時に誘導したという報告や、当研究室からの腎臓組織誘導の報告、さらに神経系譜の様々な細胞への誘導と三次元化モデルの構築についての報告があり、いずれも細胞を球状に凝集して3次元培養をすることで、その中で細胞同士が相互作用し、複数のタイプの細胞を細胞自律的に構築することが示されていた。
一概に再生と言っても、体細胞の可塑性を利用した再生、さらにはその能力の成長や進化に伴った変化、それに関わるエピジェネティックな制御、またそれらの細胞が形態形成をするための内在性のメカニズム、インビトロでの再構築と様々な角度からのアプローチがあった。今後、それぞれが有機的にbuild upされることで、再生生物学、再生医学の分野はますます加速度的に進んでいくのではないかと肌で実感できた学会であった。最後に、このような貴重な会に参加するに当たりサポートいただいた「幹細胞を用いた臓器再建と次世代医療・創薬を目指す研究教育拠点」の支援プログラムに深く感謝申し上げます。

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