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分  野多能性幹細胞分野
掲載日2013年 2月 18日
タイトル
Albumin /蛍光レポーターノックインヒトESおよびiPS細胞株は、分化した肝細胞の可視化、定量化、純化に有用である

Kahoko Umeda, Keiichiro Suzuki, Taiji Yamazoe, Nobuaki Shiraki, Yuichiro Higuchi, Kumiko Tokieda, Kazuhiko Kume, Kohnosuke Mitani , Shoen Kume (2013)

Albumin gene targeting in human embryonic stem cells and induced pluripotent stem cells with helper-dependent adenoviral vector to monitor hepatic differentiation. Stem Cell Res. 2013 Mar;10(2):179-94.

 創薬研究において、新薬候補物質がどのように肝臓で代謝され、薬効や毒性をもたらすかを評価することは重要である。しかし、新鮮なヒトの肝細胞の入手は困難であり、また、現在、薬効毒性試験に用いられている凍結肝細胞では、薬物代謝活性に人種差やロット間の差があることが問題となっている。ヒト ES、iPS細胞から、成熟肝細胞を効率よく分化させることができれば、ヒト肝細胞を安定に供給でき、上記の問題が解決できる。これまでに、多能性幹細胞分野(粂 昭苑教授)の白木伸明助教らは、中胚葉由来の培養細胞株 M15 細胞を用いてヒトES細胞から内胚葉組織である肝臓を効率的に分化誘導する方法を報告しており(Shiraki et al., Genes Cells, 2008)、これらの研究で得られた知見を利用し、擬似基底膜(synthesized basement membrane, sBM)による肝臓分化誘導系の開発にも成功している(Shiraki et al., PLoS One, 2011)

今回、同分野の梅田香穂子らは、高効率な遺伝子相同組換え技術であるヘルパー依存型アデノウィルスを用いて、アルブミン ( ALB ) 遺伝子座に橙色蛍光タンパク質(mKO1)遺伝子を導入したヒトES細胞株およびiPS細胞株を樹立した。 この細胞株由来の分化細胞では、 mKO1の蛍光が内在の ALB 遺伝子の転写活性を反映するため、レポーターの蛍光を指標に、 肝細胞を 可視化、定量化、純化することが可能である。 フローサイトメトリーで選別した mKO1陽性細胞と陰性細胞を、マイクロアレイ解析により比較したところ、mKO1陽性細胞において、薬物代謝など、肝機能と関連のある遺伝子群の発現が増加しており、mKO1陽性細胞が肝細胞の特性を有することが確認された。したがって、樹立した細胞株は、成熟肝細胞への分化誘導法の構築や、肝臓の発生分化の機構の解明を行う上で、有用な資源となりうる。この研究成果は Stem Cell Research 誌2013年 3月号に掲載された。

 

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