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[発生研セミナー] 3/16(木) 16:00~ 遺伝研 齋藤都暁先生

2021.03.05 ●セミナー

第400回発生研セミナー

 

 

ゲノム編集技術を用いたショウジョウバエの機能ゲノム学

 

教授 齋藤 都暁 博士
情報・システム研究機構国立遺伝学研究所

 

日 時: 令和3年3月16日 (火) 16:00~17:00
場 所: 発生医学研究所 1階カンファレンス室

 

ショウジョウバエは約3mmの昆虫であり、20世紀初頭から生命科学研究のモデル生物として活用されている。ショウジョウバエの中でも特にキイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)が広く用いられているが、これは安定的に遺伝子変異を維持可能にするバランサー染色体が開発されたことが一つの要因として挙げられる。また、異常を示す様々な突然変異系統が単離され、その蓄積がショウジョウバエのモデル生物の地位を高めたといえる。一方で、ショウジョウバエでは凍結保存技術が確立されていないため、二次的な変異の影響が解析の問題となる場合もあり、遺伝的バックグラウンドを統一して解析を進める必要がある。
我々はこの問題を解決する一つのツールとして、Crispr/Cas9システムによるゲノムワイドな網羅的ノックアウト系統の確立を目指している。ショウジョウバエの蛋白質コード遺伝子数は約14,000であり、現在、ショウジョウバエ2番染色体左腕(約2,500遺伝子)を対象に網羅的ノックアウトハエ系統群を樹立した。これらの樹立系統は遺伝的バックグラウンドが同一であるため、機能スクリーニングにおいて重要なリソースになるものと期待される。実際、樹立した系統を用いた簡便なスクリーニングを行った結果、これまでに報告されていない新たな遺伝子機能が見出された。この結果はショウジョウバエ研究の長い歴史においても、従来のスクリーニングでは網羅できなかった遺伝子が確かに存在することを示しており、我々が確立した網羅的ノックアウトリソースの可能性を示すものと期待している。

 

齋藤先生は、令和2年度発生医学研究所共同研究拠点に採択されております。
連絡先 染色体制御分野 石黒 啓一郎 (内線6606)