イベント&セミナー

[発生研セミナー] 2/18 16:00~ 久留米大 佐野浩子先生

2019.01.25 ●セミナー

第355回発生研セミナー

 

 

糖感知におけるポリオール経路の役割

佐野 浩子
久留米大学分子生命科学研究所 講師

 

日 時: 平成31年2月18日(月)16:00~17:00
場 所: 発生医学研究所 1階カンファレンス室

 

 

ヒトは進化の過程において、摂取したエネルギーを蓄積して飢餓に備える仕組みを発達させてきた。しかし、栄養環境が改善した現代では、それが肥満や肥満に起因した疾患の原因となっている。この問題を解決するためには、栄養感知および代謝メカニズムを明らかにすることが必要である。ヒトにおいては肝臓が代謝恒常性維持に中心的な役割を果たしており、糖応答性転写因子ChREBPによる糖摂取に応じた脂質合成は、肝臓による代謝恒常性維持を支える主要なメカニズムの1つである。ChREBPは糖の摂取に応じて多くの糖・脂質代謝酵素の発現を制御するマスター制御因子であり、その核移行は肝細胞に流入した糖によって制御されている。培養細胞においてはグルコースがChREBPの核移行を促進するが、生体内でChREBPを活性化する糖代謝物および糖代謝経路は不明である。
私はin vivoでの解析が容易なショウジョウバエをモデルとして、糖の感知とそれに応じた代謝調節の研究を行っている。これまでに、哺乳類の肝臓・脂肪組織に相当するfat bodyにおいて、ポリオール経路がショウジョウバエChREBPホモログの核移行および転写活性化に重要であることを明らかにした。ポリオール経路はグルコース代謝の副経路であり、グルコースをソルビトールを経てフルクトースに変換する。ヒトにおいてポリオール経路は糖尿病の増悪因子であることが知られているが、生理学的役割は不明である。本セミナーでは、発生医学研究所との共同研究で明らかにした糖感知におけるポリオール経路の役割について紹介するとともに、疾患発症との関連についても議論したい。

 

【連絡先】発生医学研究所 細胞医学分野 日野 信次朗 (内線6801)