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[発生研セミナー] 2/18 17:00~ 遺伝研 齋藤都暁先生

2019.01.29 ●セミナー

第356回発生研セミナー

 

 

レトロトランスポゾン制御装置とゲノム可塑性

 

教授 齋藤 都暁 博士
情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所

 

日 時: 平成31年2月18日(月)17:00~18:00
場 所: 発生医学研究所 1階カンファレンス室

 

 

真核生物はレトロトランスポゾンの無秩序増殖の脅威から自己防衛しつつ、ゲノムサイズの増大を果たしてきた。すなわち、真核生物はレトロトランスポゾン配列を特異的に認識し、抑制する分子とメカニズムを保持していると言える。これまでの解析からショウジョウバエ生殖細胞において、抑制されるトランスポゾンの配列情報はPIWI-interacting RNA(piRNA)と呼ばれる小分子RNAが担っていることとが報告されている。piRNAは、PIWIファミリータンパク質と結合し、転写または転写後レベルでトランスポゾンの発現抑制に機能する。ショウジョウバエPiwiは核に局在しpiRNA依存的にH3K9me3やリンカーヒストンH1を制御することで転写レベルでトランスポゾンを抑制する。これまでにハエ個体や培養細胞を用いた遺伝子スクリーニングによってトランスポゾン抑制に必要な数十の遺伝子群が明らかになっているが、同定された個々の遺伝子がトランスポゾン抑制のどの段階に機能するかは十分に解析されていない。今回我々はこれら遺伝子群の1つをOSCでノックダウンした結果、トランスポゾンの発現が顕著に上昇することを確認した。この遺伝子はZn-finger motifを有するタンパク質であり、ノックダウンするとH3K9me3やHP1aのレベルは変動しないもののH3K4me2が上昇した。現在、この分子の機能解明を進めており、その結果を報告したい。一方、OSCではpiRNAによるレトロトランスポゾンの発現抑制システムが働いているが、レトロトランスポゾンの発現はゼロではなく検出容易なレベルである。そこで発現するレトロトランスポゾンの運命について解析を試みた結果、OSCでは80nm程度のウィルス様微粒子が分泌されることが示唆された。今回はこの結果も併せて報告し、ショウジョウバエレトロトランスポゾンがどのように抑制されるのか紹介するとともに、抑制を逃れたレトロトランスポゾンがゲノムの可塑性に与える影響についても議論したい。

 

参考文献:Iwasaki et al. Piwi modulates chromatin accessibility by regulating multiple factors including histone H1 to represss transposons. Molecular Cell, 63: 408-419 (2016)

 

齋藤先生は、平成30年度発生医学研究所共同研究拠点に採択されております。

 

連絡先 染色体制御分野 石黒 啓一郎 (内線6607)