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[発生研セミナー] 2/26 16:00~ 久留米大 佐野浩子先生

2018.02.08 ●セミナー

第328回発生研セミナー

 

 

個体が糖を感知するメカニズム:
新たに見出されたポリオール経路の役割について

 

佐野 浩子 講師
久留米大学 分子生命科学研究所

 

日 時: 平成30年2月26日(月)16:00~17:00
場 所: 発生医学研究所 1階カンファレンス室

 

 

肝臓は糖代謝の恒常性維持に重要な役割を果たしている。肝臓は、摂食時には糖を取り込み、空腹時には糖を産生することにより、エネルギーの消費と貯蔵のバランスを調節している。このような代謝モードの切り替えにおいては、高度に保存された転写因子Mondo/ChREBPが中心的な役割を担っている。Mondo/ChREBPは数多くの代謝関連遺伝子を制御するマスター制御因子としてはたらき、その転写活性は、肝細胞に流入した糖によって直接制御されると考えられている。これまで、Mondo/ChREBPを制御する糖の探索が培養細胞を用いて数多く行われてきたが、生体内でMondo/ChREBPを制御する糖代謝物および糖代謝経路は未だ同定されていない。
私たちはin vivoでの解析が容易なショウジョウバエをモデルとして、糖の感知とそれに応じた代謝調節の研究を行っている。これまでに、糖感受性ホルモンCCHa2を同定し (Sano et al., 2015; Sano, 2015)、 CCHa2はヒトの肝臓に相当するfat bodyで、Mondo/ChREBP依存的に合成されることを明らかにした。そこで、CCHa2の発現を指標として、Mondo/ChREBP依存的な遺伝子発現に必要な糖代謝経路の同定を行い、ポリオール経路と呼ばれる糖代謝経路が必要であることを見出した。ポリオール経路は糖尿病合併症の発症に関わることが知られているが、生理学的役割はほとんど不明である。本セミナーでは、遺伝学的解析とNGS解析によって明らかになった糖依存的代謝調節機構について紹介するとともに、糖の感知におけるポリオール経路の意義についても議論したい。

 

参考文献
Sano et al. PLOS Genetics 11: e1005209 (2015).
Sano Fly 9: 183-187 (2015).

 

連絡先 生殖発生分野 中村 輝 (内線6557)