Hiroyuki Miwa and Takumi Era.
Tracing the destiny of mesenchymal stem cells from embryo to adult bone marrow and white adipose tissue via Pdgfrα expression
Development (2018) 145(2), dev155879.
間葉系幹細胞は、成体において主に骨髄や脂肪組織に存在し、骨細胞、軟骨細胞、脂肪細胞という3つの細胞系列に分化することと定義されていますが、それ以外にも筋肉細胞や肝細胞、神経細胞等に分化する多能性を有することが報告されています。ヒトにおいて比較的容易に骨髄や脂肪組織から分離して培養できることから既に臨床利用され、治療効果をあげていますが、発生の起源とその後の分布・分化といった細胞の性質は解明されていませんでした。発生の起源や細胞の性質を明らかにすることは、間葉系幹細胞の臨床応用の安全性のために重要です。
今回、幹細胞誘導分野の三輪裕幸研究員(現東京薬科大学薬学部助教)と江良択実教授は、マウスにおいて間葉系幹細胞がいつ・どこで発生し、その後どのような運命をたどるかを詳細に解析しました。
先ず、間葉系幹細胞の発生過程を調べるため、受精後1日毎に胎仔から血小板由来成長因子に対する受容体Pdgfrαを発現する細胞を分取し間葉系幹細胞としての活性を検討したところ、間葉系幹細胞の数は受精後11日目から14日目にかけて大きく増加することが分かりました(図)。次に、以前作製した遺伝子改変マウス(Pdgfrα-CreERノックインマウス)を使って成体の間葉系幹細胞の起源を調べたところ、それらは中胚葉及びそこから発生してくる胎仔期のPdgfrα発現細胞(間葉系幹細胞)に由来することが明らかとなりました。今回得られた知見は、間葉系幹細胞を臨床に応用する際に、起源や由来の異なる不適切な細胞を用いることで起こる問題を防ぐことに繋がり、安全性の向上に寄与することが期待されます。
本研究成果は、2018年1月29日Development 誌145巻2号に掲載されました。
図:間葉系幹細胞の数の変化