【日時】2026年4月21日(火) 14:00~15:00
【場所】発生医学研究所 1階カンファレンス室
要旨:マウスの結果をどこまでヒトに適用できるか—多くの生命科学者が直面し、ときに目を背けたくなったことのある問いであろう。生物種が変わると、ゲノムサイズも染色体数が異なり、遺伝子レパートリーや配列も個々に変遷を辿ってきたといえる。 それでも、我々はしばしば、特定の遺伝子やゲノム領域が種間で一対一に対応している(1-to-1 orthologous)という想定をしがちである。これまでの分子生物学、とくにその黎明は、いわば「種間対応を認めやすいゲノム要素」の上に築かれてきた側面がある。現在、T2T(telomere-to-telomere)と称される完全ゲノム配列が視野に入り、単純配列や多重化した領域の全容も露わになりつつある。高精度なゲノム情報がヒトや実験動物に限らず多様な生物種で得られるようになり、種間比較のための材料は増える一方で、生命科学のツールとしての分子進化学のリテラシーの普及の場は限られているのが現実である。 本セミナーでは、偽遺伝子の痕跡はどのくらいの時間で消えてしまうのか、といった時間感覚や 、「魚類」という括り方はなぜ誤解を招きがちなのか、という系統学的認識にも触れながら、進化の時間軸と種の系統樹を念頭に、種差とその成り立ちにアプローチする術について議論したい。
参考文献:Kuraku et al. (2016) Incorporating tree-thinking and evolutionary time scale into developmental biology. Dev Growth Differ. 58:131-42.
【連絡先】発生医学研究所 脳発生分野 佐藤(竹本)晴香 (内線6585)