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[発生研セミナー] 7/5 15:00- 細胞医学分野 衞藤 貫先生

2023.06.26 ●セミナー

第464回 発生研セミナー

 

 

【日時】 2023年7月5日(水) 15:00~16:00
【会場】 発生医学研究所 1階カンファレンス室 + Zoom
【演題】 オミクス解析プラットフォームの開発と老化細胞分泌表現型の分子機構
【講師】 衞藤 貫
発生医学研究所 細胞医学分野 文部科研研究員

 

【要旨】
多階層オミクス解析は、細胞や組織の状態を網羅的に検証する基盤技術である。生命現象をバイアスなく俯瞰的に捉えることができるため、新規のメカニズムや診断・創薬の標的などを発見する可能性を秘めている。その一方、膨大な情報量をもつオミクスデータをどのように効率的に解析するかという課題がある。近年、様々な条件下の細胞・組織に関するオミクスデータが取得されて、世界中の研究者が再利用できるように各種データベースに集約されているが、そのデータの活用にはバイオ情報解析の専門的知識が求められる。そこで、情報科学の習得レベルにかかわらず、オミクスデータ解析を最大限に加速させるシステムを構築したいと着想して、遺伝子発現変動を自動的に解析するRNAseqChefを開発・報告した1)。さらに、EpigenomeChefに拡充展開して、エピゲノム変動を自動的に解析できるプラットフォームを構築した2)。RNAseqChefにより得られた解析結果をEpigenomeChefにアップロードすることで、発現変動遺伝子群とそのエピゲノム変化を統合解析する機能を備えている。これら新規開発したツールについて紹介したい。
解析対象の生命現象として、細胞老化は、多様なストレスによって細胞周期が持続的に停止する状態である。老化細胞は生理学的にも病理学的にも働いており、発生過程などでは組織形成や修復、老齢期には慢性炎症などに関わっている。老化細胞は炎症性タンパク質などの合成・分泌を活発に行うことで、個体全体の老化・炎症状態に影響を与えている。この老化細胞に特徴的な分泌現象はSASP (Senescence-associated secretory phenotype)と呼ばれている。老化細胞のオミクス解析を通して、SASPの新規分子機構3)を見出したので合わせて議論したい。
1) Etoh K. & Nakao M. J. Biol. Chem., 2023.
2), 3) 未発表・論文準備中

 

【連絡先】熊本大学 発生医学研究所 細胞医学分野 中尾 光善(内線:6800)