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[発生研セミナー] 1/9 16:00~ 慶應大 秋山智彦先生

2018.12.12 ●セミナー

第348回発生研セミナー

 

 

2つのヒストン脱メチル化酵素により制御される転写調節機構

 

助教 秋山 智彦 博士
慶應義塾大学医学部システム医学講座

 

日 時: 平成31年1月9日(水)16:00~17:00
場 所: 発生医学研究所 1階カンファレンス室

 

 

細胞のアイデンティティーは遺伝子発現を制御する転写因子の種類によって規定される。分化の過程では「転写因子セット」の切替えが起こり、ダイナミックな細胞アイデンティティーの変遷が起こるが、その分子基盤はいまだ明らかにされていない。胚性幹細胞において分化に関連する遺伝子領域はヒストンH3K27のメチル化によって抑制状態にある。H3K27を脱メチル化する特異的酵素として相同性の高い二つの遺伝子UTXとJMJD3があり、転写因子を介した分化制御には、これらの脱メチル化酵素の関連が疑われた。我々はUTXおよびJMJD3のゲノムワイドな結合領域の探索および機能解析を行い、二つの脱メチル化酵素が分化状態によって異なる役割を果たすことを見出した。UTXの局在は未分化細胞・分化細胞ともに、マスター転写因子(OCT4やGATA4など)が結合するエンハンサー領域に見られ、酵素活性非依存的に転写因子の結合能を制御していることがわかった。一方、JMJD3は未分化細胞ではゲノム上に殆ど存在しておらず、分化に伴い結合領域が現れ、活性化遺伝子のコーディング領域に局在することが明らかとなった。さらに、JMJD3は触媒活性を介して転写を活性化し、分化遺伝子ネットワークを構築していることがわかった。すなわち、同じH3K27のメチル化をターゲットとするUTXとJMJD3は異なる局在制御を受け、転写調節において別々の機能を果たしていることが示唆された。

 

秋山先生は、平成30年度発生医学研究所共同研究拠点に採択されております。
連絡先 生染色体制御分野 石黒 啓一郎 (内線6607)