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[発生研セミナー] 新任講演会 9/3 16:00~ 塩田倫史先生

2018.08.29 ●セミナー

第339回 発生研seminar

発生医学研究所 新任講演会

 

塩田倫史准教授は7月より発生研へ着任されました。下記の通り記念講演を開催致します。

 

【Date】Sep. 3 (Mon), 2018 16:00~16:30
【Venue】発生医学研究所IMEG 1階カンファレンス室

 

【Title】 非B型DNA/RNA構造体と神経機能の関与 
【Speaker】 塩田 倫史

 

【Abstract】
DNA は、右巻き二重らせんであることが Watson 博士と Crick 博士によって1953 年に発見された。この DNA の基本的な構造は「B 型 DNA」と呼ばれる。実は、一般的に知られているこの右巻き二重らせん構造以外にも、左巻き DNA、三重鎖 DNA、四重鎖 DNA等「非 B 型 DNA」と呼ばれる構造が発見されており、 DNA はその配列の特徴や溶媒の環境により、試験管の中では右巻き二重らせん構造以外の構造を取り得ることが報告されている。これらは興味深い結果ではあったが、実際に細胞内で非 B 型 DNA 構造ができるか、という疑問は長らく明らかにされていなかった。しかしながら近年、非 B 型 DNA 及び RNA 構造のひとつである「グアニン四重鎖」が実際に細胞内に存在することが報告された。さらに、グアニン四重鎖は神経疾患の原因となる可能性も示唆されてきている。
グアニン四重鎖構造は、グアニンが豊富な配列領域で、1 本鎖 DNA もしくは RNA が形成する特殊な高次構造の 1 つである。グアニン残基を豊富に含む DNA や RNA の一本鎖配列において 4 分子のグアニン残基が G カルテットとよばれる平面構造を形成する。これが層状に重なることで、グアニン四重鎖構造が形成される。グアニン四重鎖構造は、通常 1 本鎖ヘアピン構造との動的な平衡構造として存在しているといわれている。グアニン四重鎖構造を形成する DNA 配列はこれまでに、テロメア領域をはじめとして、がん関連遺伝子の DNA プロモーター領域に存在し、抗がん作用の標的として知られている。バイオインフォマティクス解析では、ヒトゲノム中に 376,000 個の DNA グアニン四重鎖構造形成配列が存在することが予測され、テロメア、遺伝子プロモーター、リボソーム DNA および組換えホットスポットに特に多く見られる。また、 mRNA 合成、発現および機能において重要な役割を果たす第 1 イントロンの 5’ 末端、および 5’、3’ 末端非翻訳領域に多く位置することも示されており、がん関連遺伝子以外の遺伝子における転写・翻訳にも関与すると考えられている。
本セミナーでは、グアニン四重鎖と神経疾患との関与について疾患例を紹介し、私が今後取り組む研究課題についてお話ししたい。

 

【Contact】 発生医学研究所 染色体制御 石黒啓一郎  (Ext 6606)