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[発生研セミナー] 5/10 16:00~ 九大生医研 鵜木元香先生

2018.04.18 ●セミナー

第336回 発生研セミナー

 

【日時】平成30年5月10日(木) 16:00~17:00
【会場】発生医学研究所 1階カンファレンス室

 

【演題】ICF症候群の分子基盤
~DNA修復とエピジェネティック制御はつながるか?~

【講師】 鵜木 元香 博士
 九州大学 生体防御医学研究所 エピゲノム制御学分野 助教

 

【要旨】
ICF(Immunodeficiency, centromeric instability, facial anomalies)症候群は免疫不全と、DNA低メチル化を伴う染色体の不安定化、軽度の顔貌異常を主徴とする常染色体劣性の遺伝病である。ICF症候群には、ペリセントロメア領域の反復配列にのみDNA低メチル化を認める ICF1と、セントロメア領域とペリセントロメア領域の両方の反復配列にDNA低メチル化を認めるICF2、ICF3、ICF4、ICFXの5タイプが知られている。ICF1の原因遺伝子はDNMT3Bで、ICF2、ICF3、ICF4の原因遺伝子は、それぞれZBTB24、CDCA7、HELLSである。ICFXについては、まだ原因遺伝子が同定されていない。ZBTB24はCDCA7の転写活性化因子であり、HELLSはクロマチンリモデリング因子である。今回私たちは機能がまだよくわかっていないCDCA7の相互作用タンパク質を網羅的に同定し、CDCA7と共沈してくる蛋白質として、HELLSと非相同末端結合(NHEJ)型DNA修復やV(D)J遺伝子再構成に関与するKu80とKu70を同定した。私たちは実際にレポーターを用いたアッセイにて、CDCA7やHELLSがNHEJを促進することを見出した。ICF患者由来のリンパ芽球様細胞や、ゲノム編集技術で作製したICFモデルHEK293細胞では、内因性のDNA損傷が蓄積しており、これらの知見をつなぎ合わせると、ICF症候群患者に認められるセントロメア領域を介した染色体融合などのいくつかの表現型が説明できそうである。DNAメチル化はDNA複製の際にDNMT1-UHRF1複合体によって維持されるが、セントロメア領域とペリセントロメア領域の反復配列のDNAメチル化維持にはCDCA7-HELLSによる別機構の存在が考えられ、最後にその機構について考察したい。

 

【参考文献】
1)Thijssen et al., Nat. Commun. (2015) 6, 7870
2)Nitta et al., J. Hum. Genet., (2013) 58, 455-460

 

共催:発生医学研究所 トランスオミクス医学研究拠点

【連絡先】熊本大学 発生医学研究所 染色体制御分野 石黒 啓一郎(6606)