日時:平成30年1月26日(金)12:00~13:00
場所:発生医学研究所 1階カンファレンス室
真核細胞の染色体には、ヘテロクロマチンと呼ばれる高度に凝縮した構造が存在している。この構造は、セントロメアやテロメアなどの染色体機能ドメインの構築に必須なだけでなく、エピジェネティックな遺伝子発現制御にも重要な役割を果たしている。ヘテロクロマチン領域には、ヒストンH3の特徴的なメチル化修飾(H3K9me)が存在し、HP1などのクロマチンタンパク質が結合することで、高次のクロマチン構造が形成されると考えられている。一方、HP1がどのようにヌクレオソームに結合して抑制的なクロマチン構造を形成しているのか、またHP1のヌクレオソーム結合が細胞内でどのように制御されているのかについては依然不明な点が多く残されている1)。私たちはこれまでに、哺乳類のHP1が細胞内で恒常的なリン酸化修飾を受け、そのリン酸化がH3K9me3を含むヌクレオソームへの結合に重要なことを明らかにしてきた2,3)。同様なリン酸化による制御は分裂酵母でも観察されており4)、リン酸化が種を超えてHP1の機能制御に関与していることが示唆される。さらに最近、HP1のリン酸化が核内での液相分離(liquid phase separation)に重要な役割を果たしていることが報告された5)。本講演ではHP1の機能制御について、最近の知見も含めて紹介したい。
参考文献
1) Nishibuchi & Nakayama J Biochem. 156: 11-20 (2014)
2) Hiragami-Hamada et al. Mol Cell Biol. 31: 1186-1200 (2011)
3) Nishibuchi et al. Nucleic Acid Res. 42: 12498-12511 (2014)
4) Shimada et al. Genes Dev. 23: 18-23 (2009)
5) Larson et al. Nature 547: 236-240 (2017)
中山先生は、平成29年度発生医学研究所共同研究課題に採択されております。
連絡先:発生医学研究所 多能性幹細胞分野 岡野正樹 (内線6806)