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[発生研セミナー] 2月6日16:00~熊本大 古賀友紹先生

2017.01.27 ●セミナー

第299回 発生研セミナー

 

ロイコトリエンB4受容体BLT1の発現で規定される樹状細胞の同定

 

古賀 友紹
熊本大学大学院先導機構
リーディングプログラムHIGO・特任助教

 

日時:平成29年2月6日(月)16:00~17:00
場所:発生医学研究所 1階カンファレンスルーム

 

 

ロイコトリエンB4 (LTB4) は、膜リン脂質から切り出されたアラキドン酸より産生される脂質メディエーターである。LTB4の高親和性受容体BLT1は、好中球やマクロファージに発現しており、炎症反応を促進する。一方で、低親和性受容体であるBLT2は、皮膚角化細胞や腸管上皮細胞に発現しており、上皮バリア機能を促進する。我々はこれまでに、BLT1およびBLT2の遺伝子欠損マウスを作製し、その機構解析を行なってきた。その結果、BLT1が活性化T細胞にも発現しており、喘息や多発性硬化症などの多様な免疫疾患を増悪させることが明らかになり、炎症反応だけでなく免疫応答においてもBLT1が重要な役割を果たすことが示唆された。そのような研究背景がありながら、免疫応答の司令塔である樹状細胞 (DC) におけるBLT1の役割はほとんど解析されてない。そこで我々は、抗マウスBLT1単クローン抗体を独自に樹立し、樹状細胞におけるBLT1発現を解析した。興味深いことに、樹状細胞にはBLT1の発現量で規定される2つのサブセット(BLT1hi DCとBLT1lo DC)が存在することがわかった。これらの細胞集団を分取し、さらに詳細な解析を行なったところ、これらのサブセットは、①末梢組織から所属リンパ節へ移行する能力、②抗原特異的なT細胞を増殖させる能力、③ナイーブT細胞をエフェクターT細胞へ分化させる能力において性質が大きく異なることがわかった。分子メカニズム解明のため、各サブセットを用いてマイクロアレイ解析を行なった結果、BLT1hi DCではIL-12p35が高発現しており、BLT1lo DCではIL-2が高発現している事がわかった。詳細な検討の結果、これらサイトカイン発現の差がT細胞分化とT細胞増殖の促進に寄与することもわかった。本研究は、BLT1の受容体発現量で規定されるDCサブセットが存在することと、それらのサブセットによる免疫応答制御機構を明らかにしたものであり、脂質と免疫応答のつながりを解明する一助となり得るものである。

 

*多数のご来聴をお待ちしています*

 

【連絡先】発生医学研究所 細胞医学分野 中尾 光善(内線6804)