【日時】7月11日(月)12:00~13:00
【会場】発生医学研究所 1階カンファレンス室
哺乳類の脳神経系は、ニューロンとグリア細胞の相互作用により高次機能を発揮しており、それらの細胞種は発生段階依存的に神経幹細胞から分化する。神経幹細胞から分化した幼若なニューロンは、脳内の様々な領域へと移動し、神経突起を伸展させ成熟したニューロンとなる。このような神経幹細胞の分化制御やニューロン発達は、DNA メチル化やヒストンタンパク質修飾といったエピジェネティクス機構によって厳密に調整されている。我々はこれまで、それらのエピジェネティクス制御の分子基盤の解明を目指して研究を進めてきた。最近では、記憶や学習に必須な脳領域である海馬の形成に、DNA メチル化酵素の一つDNMT1 が重要な役割を果たしていることを明らかにした。さらに、ヒトの胎児大脳皮質由来の神経幹細胞のニューロン分化に、ヒストン脱メチル化酵素LSD1 が必須であることを突き止めた。特にこのLSD1 の働きは、マウスの神経幹細胞では認められなかったことから、ヒトの脳の発達に特徴的な現象である可能性が示された。本セミナーでは、我々のそれらの最近の知見について紹介する。
1. Noguchi H. et al, DNA Methyltransferase 1 Is Indispensable for Development of the Hippocampal Dentate Gyrus. J Neurosci. , 1;36(22):6050-6068, 2016.
2. Hirano K & Namihira M. LSD1 Mediates Neuronal Differentiation of Human Fetal Neural Stem Cells by Controlling the Expression of a Novel Target Gene, HEYL. Stem Cells . in press, 2016.
本研究は、H28年度「発生医学の共同研究拠点」の採択課題です。
【連絡先】発生医学研究所 細胞医学分野 日野 信次朗(内線6801)