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分  野分子細胞制御分野
掲載日2014年 6月 30日
タイトル
SEM連続断面観察により、AAA型シャペロンCdc48pがミトコンドリア融合反応に必要であることを解明

Naoyuki Miyazaki, Masatoshi Esaki, Teru Ogura, and Kazuyoshi Murata. 

Serial block-face scanning electron microscopy for three-dimensional analysis of morphological changes in mitochondria regulated by Cdc48p/p97 ATPase.

J Struct. Biol., in press

 増殖している細胞において,ミトコンドリアはヒモ状の形態を示す。この形態は静的なものではなく,ミトコンドリアは融合と分裂を頻繁に繰り返している。分子細胞制御分野(小椋 光教授)では,サイトゾル(細胞質基質)に存在するAAA型シャペロンの1つCdc48pの機能欠損によって,ミトコンドリアが細胞内で巨大な塊を形成することを報告している(Esaki & Ogura, 2012 ; 図B)。しかしながら,観察される巨大なミトコンドリアの塊は膜融合して巨大なミトコンドリアが形成されているのか,あるいは小さなミトコンドリアが膜融合しないで集積しているのか,蛍光顕微鏡観察では,解像度の限界から,不明なままであった。

 そこで,今回この点を明らかにするために,出芽酵母細胞の走査型電子顕微鏡を用いた連続断面観察(SBF-SEM)を生理学研究所との共同研究として行った。SBF-SEMではまず,樹脂包埋された細胞の、切削表面に現れる超微形態を走査電子顕微鏡(SEM)観察する。そして、さらに試料表面をダイヤモンドナイフで薄く切削し,新たに出現する表面の形態をSEMで取得する。これを繰り返し,得られた細胞の連続断面画像を再構築することによって3次元構造を明らかにする。野生型酵母のSBF-SEM観察では,ヒモ状につながったミトコンドリアが観察されたが,Cdc48pの機能欠損株では,断片化した小さなミトコンドリアが集積している様子が観察され,それぞれのミトコンドリア膜は繋がっていないことが明らかとなった(図D)。 これにより,Cdc48pは,ミトコンドリア融合反応において極めて重要な役割を果たしていることが分かった。これらの研究成果は,Journal of Structural Biology 誌電子版に先行掲載された。また,本研究の一部は、当研究所が推進する「発生医学の共同研究拠点」制度に基づく生理学研究所の村田和義准教授の採択課題として実施された。

 

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図 Cdc48変異株ではミトコンドリアが凝集する 

 A-B) 蛍光タンパク質を用いたミトコンドリア形態観察像(A, 野生株; B, Cdc48変異株)。共焦点蛍光顕微鏡を用いて取得した3次元画像を2次元に投影した。

 C-D) SBF-SEM連続画像から構築した3Dモデル。(C, 野生型株; D, Cdc48変異株)(赤,核; 青,液胞; 緑,ミトコンドリア; 紫,細胞膜)