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分  野造血発生分野(現・組織幹細胞分野)
掲載日2007 年 5月 9日
タイトル
血管内皮細胞の運動性は細胞同士の密着性と両立する

Renyong Guo, Hiroshi Sakamoto, Shigeki Sugiura and Minetaro Ogawa (2007) Endothelial cell motility is compatible with junctional integrity. J. Cell. Physiol. 211, 327-335.

  血管内皮細胞はアドヘレンスジャンクション (AJ)とタイトジャンクション(TJ)を形成して互いに接着している。これまで、敷石状に接着している血管内皮細胞は、増殖抑制、生存亢進、運動性低下など静的な状態にあると捉えられてきた。これに対して、造血発生分野(小川峰太郎教授)の郭仁勇(大学院博士課程)らは、胚性幹細胞由来の血管内皮細胞コロニーを蛍光顕微鏡下でタイムラプス解析することにより、血管内皮細胞は互いに接着していても増殖し、高い運動性を示すことを明らかにした。特に、細胞の密着性と運動性の両立は、血管形成を行う血管内皮細胞にとって重要な性質であると考えられる。アクチン(細胞骨格の構成分子)、Arp2/3複合体(アクチン重合を調節する分子)、VE-カドヘリン(AJの構成分子)、Claudin-5(TJの構成分子)の動態を可視化することにより、血管内皮細胞の運動はラメリポディア(膜状仮足)形成を伴う能動的な作用であり、運動する血管内皮細胞の先端部においてAJとTJが動的に再編成されることが明らかになった(図)。この特徴的な動態は、細胞運動におけるジャンクションの制御に関する普遍的で興味深いモデルを提供する。この研究成果は、Journal of Cellular Physiology 誌2007年5月号に発表された。

 

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図:血管内皮細胞の運動に伴うジャンクションの再編成

蛍光タンパクで可視化した VE-カドヘリン(A)とClaudin-5(B)の動態を蛍光顕微鏡下でタイムラプス解析した。矢印は血管内皮細胞の移動の方向、矢尻は細胞先端部のラメリポディア形成を示す。画像は10分間隔で表示。スケールバーは25 μ m。