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新任講演会 丹羽先生 Abstract

2016-08-04 ●未分類

「多能性とは?」という問いにどう答えられるのか?

 

多能性幹細胞分野  丹羽 仁史

 

科学とは現象を発見し、記述し、その背景にある法則性を見出し、これらを体系化する営みだと考えている。私は、かれこれ25年以上、マウス胚性幹細胞の多能性を維持する分子機構の研究を行ってきた。LIFシグナルがどのように入力し、Oct3/4などの転写因子をどのように制御し、さらにこれら転写因子が自己複製と無限増殖能をどのように維持するのかについて、現象を記述し、それらの体系化を試みてきた。しかし、ここに至っても、「多能性」という細胞の分化能を、端的に分子レベルで説明することは出来ていないと自覚している。このまま今のような研究を、あと15年足らず続けたとして、私は果たしてその答えにたどり着けるのだろうか?そもそも、この問いに対して、どのような答えが存在しうるのだろうか?研究環境を変えたこの機会に、改めてこのことを真剣に考えてみたい。

 

 

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Niwa, H.: Open conformation chromatin and pluripotency. Genes Dev., 21, 2671-2676, 2007.
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