“分泌型タンパク質Tsukushiの欠損は水頭症を発症する”というタイトルで、口頭発表およびポスター発表を行った。
発表内容の要旨
以前の研究で、Tsukushi(TSK)はニワトリでは目の神経幹細胞の増殖をWnt signalのアンタゴニストとして働くことで制御していることを明らかにした。哺乳類でのTSKの役割を調べるために、ノックアウト(TSK-KO)マウスを作成した。TSK-KOマウスには、脳室の拡張が見られるものの、脳脊髄液の流路および流れに異常はみられなかったことから、特発性正常圧水頭症を発症していることが疑われた。特発性正常圧水頭症は、脳室拡張の他に、認知障害、歩行異常、尿失禁が主要な診断基準になっている。そのため、TSK-KOマウスの行動解析をした結果、認知障害に近い表現型を示すことが明らかになった。TSK-KOマウスでは神経幹細胞の増殖と細胞死の制御パターンが野生型と異なっていることも明らかにした。過剰な細胞死によって脳室拡張が導かれている可能性がある。ヒト特発性正常圧水頭症との関連性を調べるために、原因不明の水頭症患者さんのDNAをシーケンスしたところTSKにある変異が見つかった。その変異型TSKを作成し、レセプターとの結合活性を調べた結果、レセプターの結合能を失っていることがわかった。
質問1
Q:脳室の拡張は一般的な水頭症とどう違うのか?
A:一般的な水頭症は流路の梗塞、流れを制御する構造の異常などで生じることが多い。TSK変異型は神経幹細胞増殖異常で生じると考えられる。
Q:梗塞型の例としてYapの変異を示していましたが、Yapが制御するHippo pathwayはなにか関係しているのか?
A:いまのところ関係している証拠はありませんが、表現型は異なるので関係性は低いと思われます。
Q:細胞死を起こす細胞はB細胞からC細胞、A細胞と分化するが、どの段階で細胞死のスイッチが入っているのか?
A:どこでスイッチが入ったかを調べたことはないですが、細胞系譜追跡などでわかると思います。
Q:グリア細胞などの他の神経系細胞に変化はないのか?
A:まだそこまで手が回っていませんが、大脳皮質の変化は見られていません。神経幹細胞の解析が済んだら、そちらも手を出していきたい。
以上です。