国際先端研究拠点
国立大学法人熊本大学 国際先端研究拠点
学術集会参加報告 2014年度

International Society for Stem Cell Research(ISSCR) Annual meeting 参加報告

多能性幹細胞分野 坂野大介

 バンクーバーで開かれた国際幹細胞学会(ISSCR)の年会に6月17日から5日間参加した。今回の学会では、昨年末に発表した化合物スクリーニングにより明らかにしたモノアミンによる膵β細胞分化制御についてポスター発表を行なった。また、粂教授より同内容についての口頭発表も行われた。多くの研究者が興味を持ってくれたことから活発な議論をさせていただくことができ、帰国後の研究のヒントをたくさん得られたと感じている。
私の研究の内容としては、糖尿病に対する移植治療をめざしマウスES細胞を用いてin vitroでインスリンを分泌できる膵β細胞を分化誘導できることに焦点を当てている。研究に対する質問の多くは、誘導した細胞が移植後に生体内でどれくらいの期間持続して治療効果を示せたのかというものや、生体内で複数の細胞から構築される膵臓というものとES細胞由来の膵β細胞の違いについてのものが多かった。世の中の興味が、臨床応用に向けて最低限の目標地点としてどのような細胞を作れば移植治療として成り立つのかという最終的な条件にあるからであろう。
実際に今回の学会でも多くの研究者が同様の再生医療を目指したほかの分化誘導方法などのアプローチについて発表していた。昨年の学会と比較すると、この一年で多くの研究者がヒトiPS細胞を用いた細胞分化により膵β細胞に分化する過程の膵前駆細胞を効率的に分化誘導しており、この細胞の糖尿病モデルマウスへの移植によって治療に成功していた。これまでは他の臓器に比べ分化誘導研究としては遅れている印象があったものの膵臓でも臨床応用が日毎に近づいていることを強く印象付けられた。
また、最近の研究の流れはやはりエピジェネティックな解析や1細胞を試料とした遺伝子発現解析技術の進歩に関するものが多くみられた。このような技術革新に付随して、in situ解析を組み合わせることで発生期の遺伝子発現やタンパク質局在を立体的に追跡しようとするこれからの流れがおこっているようにみえた。
最後に今回の発表のため旅費を支援いただいた「国際先端研究拠点における研究成果発表支援」プログラムに感謝し、報告を終わりたい。

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