国際先端研究拠点
国立大学法人熊本大学 国際先端研究拠点
学術集会参加報告 2014年度

日本発生生物学会第47回大会 参加報告
May 27-30, 2014 WINC AICHI (名古屋)
腎臓発生分野
太口敦博

2014年5月27日から4日間の日程で行われた日本発生生物学会第47回大会に参加し、口頭発表を行ったので参加報告をさせていただく。
私が発表を行った初日の“Stem Cells and Regeneration”のセッションにおいては、多能性幹細胞を用いた研究系は少なく、いわゆる成体の体細胞に含まれる幹細胞についての研究や成体組織の再生について様々な生物を用いた研究が多く報告されていた。この領域における発生学的な研究の方向性として、生物種による再生能力を比較することによりその差を生み出すメカニズムにアプローチする方法、あるいは高い再生能をもつプラナリア、イモリ、ゼブラフィッシュなどの動物を用いて成体における幹細胞の細胞特性や増殖・維持機構、再分化機構などに迫る研究が見受けられた。
また腎臓発生にも深く関係する体軸伸長に関する研究では、マウスの転写因子Tbx6とニワトリ胚のTbx6Lに着目し、それぞれの遺伝子を欠失させることで共に尾側の沿軸中胚葉形成が障害されること、そのメカニズムとして、エピブラストが原条を通過して中胚葉層へと移動する過程が影響を受けている可能性、さらにはマウスTbx6と異なりTbx6LではEMTプロセスも阻害されている可能性が示されていた。その他、尾部体幹形成と深く関わりのある遺伝子としてはGdf11について後肢形成の観点からの研究が報告されていた。Gdf11は遺伝子欠失により後肢が後方化し、逆に過剰発現により体幹の短縮と後肢の前方化が起こる。今回の発表では生物種による後肢の位置の違いに着目し、Gdf11の発現時期の早晩と後肢の位置の前後が相関するということを示していた。このメカニズムとしては、既に報告されているGdf11が後方Hox遺伝子発現を制御する機能とは別に、Pitx、Tbx4を介して後肢の位置を制御しているのではないかということが示されていた。マウスでは後肢と同じくらいの体節レベルに位置する後腎の形成において、体軸伸長と共に後方Hox遺伝子の発現が非常に重要であることが知られているが、側板中胚葉由来である後肢と、中間中胚葉由来である後腎の前後位置決定におけるメカニズムがHoxを介するか否かで異なる可能性も示唆しており興味深い。
学会会期中においては、このほかにも、腎臓の中でもウォルフ管伸長の研究をニワトリ胚を用いて行っている方や、ウォルフ管の維持とFgf受容体の関係を調べている方、さらに肝臓再生の研究を行っている方などともディスカッションをする機会があり、新たな知見やヒントも得ることができ有意義であった。
最後に、学会発表にあたり、旅費支援をいただいた「国際先端研究拠点における研究成果発表支援」プログラムに深く感謝の意を表し締めくくらせていただきたい。

 

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