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分  野分子細胞制御分野
掲載日2012年 8月 1日
タイトル
AAA 型シャペロン CDC-48/p97 は減数分裂における正確な染色体分配に関与する

Yohei Sasagawa, Atsushi Higashitani, Takeshi Urano, Teru Ogura, and Kunitoshi Yamanaka (2012) CDC-48/p97 is required for proper meiotic chromosome segregation via controlling AIR-2/Aurora B kinase localization in Caenorhabditis elegans . J. Struct. Biol. 179: 104-111.

 CDC-48/p97 ( VCP または Cdc48p とも呼ばれる)は、酵母からヒトに至るまで高度に保存されたユビキチン選択的 AAA 型 シャペロンである 。これまでに CDC-48/p97 は、細胞分裂期に様々な機能を果たすことが知られている。 今回、分子細胞制御分野(小椋 光教授)の笹川洋平研究員(現:理研 CDB 機能ゲノミクスユニット)らは、 線虫 CDC-48/p97 は Aurora B キナーゼ の局在を制御することで減数分裂における正確な染色体分配に関与すること を見いだした。

  減数第一分裂では相同染色体間の、減数第二分裂では姉妹染色分体間の接着が解離することにより、配偶子への正確な染色体分配が行われる(図 A, B )。この解離は、コヒーシンサブユニットの1つである REC-8 のリン酸化によって制御される。 Aurora B キナーゼがこの REC-8 のリン酸化を司っており、減数分裂においては Aurora B キナーゼの活性は時空間的に適切に調節されている。しかし、 Aurora B キナーゼの時空間的調節の仕組みについてはよく分かっていなかった。本研究において笹川らは、線虫 CDC-48/p97 の欠損変異体では、 Aurora B キナーゼの活性調節が異常になることを見いだした。すなわち、変異体では減数第一分裂時に Aurora B キナーゼが染色体全体にわたって存在すること(図 D )、それによって相同染色体間のみならず姉妹染色分体間のすべての接着の解離が観察され、その結果減数分裂における染色体分配が阻害された(図 C )。すでに、 線虫 CDC-48/p97 は、減数分裂期の染色体凝縮に必須である ことを明らかにしていたが、 Aurora B キナーゼ の局在制御を通して、染色体の解離制御にも働いていることが明らかになった。 これらの研究成果は、 Journal of Structural Biology 誌 2012 年 8 月号に発表された。

 

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図  (A) 正常な減数第一、第二分裂の模式図。 (B, C) ヒストン H2B::GFP 発現線虫の受精卵を用いて減数第一分裂を観察したタイムラプス像( B :コントロール RNAi 、 C : CDC-48 RNAi 線虫)。バーは 10 m m 。 (D)  卵母細胞染色体上での Aurora B キナーゼの局在部位を免疫染色により観察した。コントロール(野生体)では、 Aurora B キナーゼは相同染色体間にのみ局在するが、 CDC-48 欠損体ではより広く染色体全体に分布するようになる。