ライソゾーム病に対する遺伝子治療の研究開発
東京慈恵会医科大学 総合医科学研究センター 遺伝子治療研究部 准教授
嶋田洋太
ライソゾームは、細胞内において生体高分子の分解を担うオルガネラであり、様々な酵素を含有している。これら酵素の遺伝的な欠損を原因として生じる疾患群がライソゾーム病であり、先天代謝異常症の一つに分類される。ライソゾーム病では、欠損した酵素の基質が蓄積することにより多様な症状が生じるが、半数以上の疾患で中枢神経症状を伴うことが知られており、中枢神経を含む全身の治療が必要となる。こうした治療を実現するモダリティとして、近年、遺伝子治療に大きな注目が集まっている。欧米においては、異染性白質ジストロフィーに対するレンチウイルスベクターを用いた造血幹細胞遺伝子治療が薬事承認を受けているほか、他の疾患においても複数の臨床試験が実施されており、遺伝子治療の実用化が加速している状況である。私たちはこれまで、複数のライソゾーム病に対する遺伝子治療の基礎研究やトランスレーショナル研究を進めてきた。本セミナーでは、私たちのこれまでの成果や現在の研究開発についてご紹介したい。
参考文献
1 Matsushima SK, Shimada Y, et al., J Clin Invest. 2025;135(12):e180724.
2 Shimada Y, Ishii N, et al., Gene Ther. 2023;30(3-4):288-296.
3 Tsunogai T, Ohashi T, et al., Mol Ther Methods Clin Dev. 2022:25:448-460.
4 Wakabayashi T, Shimada Y, et al., Hum Gene Ther. 2015;26(6):357-66.