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[生命資源&発生研共催セミナー]10/10 東京大 神吉康晴先生

2017.10.10 ●セミナー

生命資源研究支援センター講演会
第317回 発生研セミナー  共催

 

 

血管新生をコントロールするヒストン修飾複合体

‘エピゲノム制御によるアクセルとブレーキ’

 

講師:神吉 康晴 先生
東京大学アイソトープ総合センター  助教

 

日時:平成29年10月10日(火)   16:00~17:30
場所:熊本大学発生医学研究所 1Fカンファレンス室

 

 

Abstract
血管新生は、胎生期で重要であることはもちろんのこと、成人においても固形癌の生育や浸潤、糖尿病性網膜症進展に深く関与している現象である。こうした病理学的血管新生のみならず、生理学的な血管新生も常時起こっており、周囲の環境に合わせて必要な量だけ起こすようなアクセルとブレーキの機構が備わっていると考えられる。
培養系において、ヒト臍帯静脈内皮細胞にVEGF刺激を行うと、血管新生のキーとなる転写因子群(EGR3、EGR2、NR4A2など)が、刺激後わずか15分以内で一斉に転写され、すぐにその転写誘導は終結することを報告した(Suehiro JI et al 2014 JBC)。更に、各種ヒストン修飾抗体を用いたChIP-seqにより、これら早期誘導転写因子群に共通した特徴が見出した。1) 刺激前はH3K27me3、つまりPolycomb Complex 2 (PRC2)によって抑制されていること。2) 刺激後わずか15分程度で急速にH3K4me3修飾が入ること。3) 転写が行なわれている刺激後15分の時点でもH3K27me3修飾は外れず、bivalent(H3K4me3とH3K27me3が共存)状態を形成すること。4) H2AK119Ub修飾が刺激後15分で外れ、60分後には元に戻ること。
以上より、血管新生において重要な早期誘導転写因子群においては、H3K4me3修飾を担うTrithorax Complex、H3K27me3修飾を担うPRC2、H2AK119Ub修飾を担うPolycomb Complex 1 (PRC1)、という3つのヒストン修飾複合体により、転写の開始及び終結が分単位で精密に制御されていることが分かった。
本セミナーでは、血管内皮細胞における分単位の時系列エピゲノムデータから明らかとなった、’血管新生のアクセルとブレーキ’の機構について紹介したい。

 

連絡先:生命資源研究支援センター 分子血管制御分野   南  敬 教授 (内線 6500)
連絡先:発生医学研究所  細胞医学分野        中尾 光善 教授 (内線 6800)