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[発生研セミナー]11月25日16:00~徳島大学 小迫英尊先生

2016.11.17 ●セミナー

第286回 発生研セミナー
トランスオミクス医学研究拠点ネットワーク形成事業 共催

 

リン酸化プロテオミクスによる疾患原因キナーゼの機能解析

 

小迫 英尊 教授

徳島大学 先端酵素学研究所 藤井節郎記念医科学センター 細胞情報学分野 

 

日時:平成28年11月25日(金)16:00~17:00
場所:発生医学研究所 1階カンファレンス室

 

 

ヒトにはタンパク質リン酸化酵素(キナーゼ)が500種類以上も存在し、それぞれ標的とする基質タンパク質をリン酸化することにより、様々な細胞内情報伝達系で中心的な役割を果たしている。キナーゼの遺伝子異常は種々の疾患を引き起こすため、個々のキナーゼの下流基質を同定し、そのリン酸化による機能制御を明らかにすることは、基礎研究のみならず診断・創薬などの臨床応用の見地からみても重要である。近年の各種プロテオミクス技術の著しい進歩により、キナーゼ基質を効率的・網羅的に同定する方法が数多く報告されている。
これまでに我々はIMACと2D-DIGE(蛍光標識二次元電気泳動)を組み合わせた新たなリン酸化プロテオーム解析法を開発した。そして細胞のがん化や分化などで多彩な役割を果たすERK/MAPキナーゼを対象とすることにより、新規ERK基質を多数同定し、中でも核膜孔複合体のリン酸化による核—細胞質間輸送の制御機構を明らかにした。現在このIMAC/2D-DIGE法やPhos-tagウェスタンブロット法、および最新の質量分析計と安定同位体標識による定量法を駆使することにより、様々な疾患の原因となる複数のキナーゼ(パーキンソン病の原因遺伝子産物であるPINK1や自己免疫疾患に関わるPKDなど)の基質候補を同定し、その病態形成機構を解析しており、これらの結果についても紹介したい。

 

参考文献
Ishikawa E., Kosako H. et al., Nat. Commun. (2016) 7, 12756.
Kosako H. and Motani K., Methods Mol. Biol. (2016) 1487, in press.
Akabane S. et al., Mol. Cell (2016) 62, 371-384.
Shindo Y. et al., Nat. Commun. (2016) 7, 10485.
Koyano F. et al., Nature (2014) 510, 162-166.
Kosako H. et al., Nat. Struct. Mol. Biol. (2009) 16, 1026-1035.

 

小迫先生は、平成28年度発生医学研究所共同研究課題に採択されております。

 

連絡先:発生医学研究所 細胞医学分野 斉藤典子 (内線6802)