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健康と病気の発生起源説(DOHaD説)を考察 -やせと肥満を誘導する2つの酵素が働く可能性を指摘-

2019.05.31 ●ニュース

熊本大学発生医学研究所細胞医学分野の中尾光善教授、日野信次朗准教授、阿南浩太郎研究員、荒木裕貴大学院生(同大学院医学教育部博士課程)は、代謝に関わる2つの酵素経路「NAD+依存性脱アセチル化酵素Sirt1(NAD+-Sirt1)」と「FAD依存性リジン特異的脱メチル化酵素LSD1(FAD-LSD1)」が、特定の遺伝子群の働きを調節し、栄養シグナルが伝達されることに着目して比較検討してきました。これらの経路は食事性ビタミン※6やインスリンなどの栄養に関わるホルモンによって制御され、その結果、脂肪細胞や骨格筋などで代謝活性と組織特有の性質を形成することが報告されています。

 

英国のデビッド・バーカー博士(1938-2013年)らは、低出生体重児(出生時体重が2,500グラム未満)がその後に心筋梗塞や高血圧、2型糖尿病、肥満といった成人病を発症するリスクが高いことを疫学調査で明らかにして、「成人病の胎児期起源説」(バーカー仮説)を提唱しました。近年では、胎児だけでなく新生児・乳児を含めた出生前後における環境因子の影響をまとめて、「健康と病気の発生起源説」(DOHaD説)(ドーハッド)とよばれています。

 

本論文は、これまでの研究を元に、脂肪燃焼を誘導するNAD+-Sirt1と脂肪蓄積を誘導するFAD-LSD1の2つの経路がDOHaD説のメカニズムに関わる可能性について考察したものです。現代社会で注目される生活習慣病、加齢による変化、肥満や糖尿病、認知症などの発症や罹りやすい体質形成について理解を深めると期待されます。さらに、受胎期の両親の適切な栄養と生活環境が重要であることを示しています。

 

本研究成果は、文部科学省科学研究費補助金、武田科学振興財団研究助成などの支援を受けて、世界最高水準の総説雑誌「Trends in Endocrinology and Metabolism」(電子版)に米国時間の2019年5月28日に掲載されました。

 

 

論文情報
M. Nakao, K. Anan, H. Araki, and S. Hino. Distinct roles of NAD+-Sirt1 and FAD-LSD1 pathways in metabolic response and tissue development. Trends Endocrinol. Metab. (in press)

 

 

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