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分  野分子細胞制分野
掲載日2010年 5月 28日
タイトル
AAA プロテアーゼ FtsH は非天然型構造のタンパク質を分解する

Sara Ayuso-Tejedor, Shingo Nishikori , Takashi Okuno , Teru Ogura* & Javier Sancho* (2010) FtsH cleavage of non-native conformations of proteins. J. Struc. Biol. May 8. [Epub ahead of print] *corresponding authors

  AAA ファミリーに属する分子シャペロンやプロテアーゼが基質タンパク質の何を認識しているのかについては、まだよく分かっていない。 AAA プロテアーゼに属する FtsH は特定のアミノ酸配列をもつ基質タンパク質を分解するという報告と物理的安定性の低いタンパク質を好んで分解するという報告がある。分子細胞制御分野(小椋 光教授)では、これまで大腸菌 由来 の フラボタンパク質 flavodoxin をモデル基質として FtsH プロテアーゼを 解析し、 補酵素フラビンが結合していない apoflavodoxin を FtsH が 分解すること を明らかにするとともに 、 フラビン に対する親和性が低下した変異 体を用いて FtsH の 分解 活性 を分光学的にモニターすることに成功し てい た ( Okuno ら、 2006 ) 。 今回、分子細胞制御分野は、 スペイン Zaragoza 大学 Javier Sancho 教授のグループと共同で、アナベナ属の flavodoxin をモデル基質として、 31 種類にも及ぶ変異タンパク質の FtsH による分解を解析し、分解効率が物理的安定性と負の相関を示すことを明らかにした(図)。大腸菌の flavodoxin やまったく異なるタンパク質 lactalbumin も同じ相関曲線に乗ることを示した。さらに、分解効率は構造のほどけた画分( fraction of unfolded proteins )の割合に比例することから、 FtsH は基質タンパク質をほどいて分解するというより、ほどけた画分に作用して分解することが明らかになった。本研究の主要部分は、 Sancho 教授のグループの博士課程大学院生 Ayuso-Tejedor が、外国人客員研究員( 2007 年当時)として分子細胞制御分野に3カ月間滞在して行ったものであり、この成果は Journal of Structural Biology 誌電子版に先行掲載された。

 

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図. FtsH による分解効率と構造的安定性。アナベナ属の野生型 flavodoxin (★)及び 31 種類の変異型 flavodoxin (□)(いずれも補酵素フラビンが結合していない apoflavodoxin )の FtsH による分解効率と構造的安定性をプロットした。アナベナ属の apoflavodoxin 以外のタンパク質【 GST (glutathione S-transferase) 、フラビンが結合した holoflavodoxin 、 E. coli (大腸菌) flavodoxin 、 LA (lactalbumin) 】は■で表示した。