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分  野分子細胞制御分野
掲載日2011年 4月 11日
タイトル
6量体 AAA シャペロン p97 の機能には ATP 加水分解活性のサブユニット間の正の協同性が重要である

Shingo Nishikori * , Masatoshi Esaki * , Kunitoshi Yamanaka, Shinya Sugimoto, and Teru Ogura (2011) Positive cooperativity of the p97 AAA ATPase is critical for essential functions. J. Biol. Chem. , in press (*equal contribution).

 分子細胞制御分野(小椋 光教授)では,様々な AAA シャペロンについて,細胞機能や分子特性などに関する研究を行っています。今回,錦織伸吾博士(学振特別研究員;現シカゴ大ポスドク)・江崎雅俊助教らは,代表的な AAA シャペロンである p97 の ATP 加水分解能特性とその生物学的意義を解析しました。 p97 は連続する2つの ATP 加水分解ドメイン( AAA ドメインと呼ばれる)を持ち,また6量体を形成することから,合わせて 12 個の ATP 加水分解部位を持ちます。 N 末端側 AAA ドメインは, ATP 加水分解能は低いが, C 末端側 AAA ドメインの活性を調節していることがわかりました。また, C 末端側 AAA ドメインの ATP 加水分解能は細胞の増殖に必須で,正の協同性を持っていることがすでに分かっていました。正の協同性とは,あるサブユニットによる ATP 加水分解反応が6量体中の別のサブユニットの ATP 加水分解反応を促進するという性質です。興味深いことに,細胞の増殖速度は ATP 加水分解能の強さよりも、この正の協同性の強さと強い相関を示しました(図)。このことは,6量体を形成するサブユニットが連携して働くことが p97 の機能に重要であることを示しています。本成果は, Journal of Biological Chemistry 誌電子版に先行掲載されました。

 

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図 細胞の増殖能と p97 の ATP 加水分解能との相関図

 

様々な p97 変異体を精製し, ATP 加水分解能( ATPase )とその協同性( Hill 係数)を測定した。 Hill 係数が1よりも大きいとき,正の協同性を示す。また,それぞれの p97 変異体を発現する酵母株について,その増殖速度を調べ,それぞれの相関係数を最小二乗方により求めた。相関係数は1に近いほど,高い相関関係にあることを示す。