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分  野生殖発生分野 (久留米大学との共同研究)
掲載日2015年5月28日
タイトル
ショウジョウバエの栄養応答性ホルモンCCHamide-2は個体の成長を栄養条件と協調させる

Hiroko Sano, Akira Nakamura, Michael J. Texada, James W. Truman, Hiroshi Ishimoto, Azusa Kamikouchi, Yutaka Nibu, Kazuhiko Kume, Takanori Ida, and Masayasu Kojima (2015). The nutrient-responsive hormone CCHamide-2 controls growth by regulating insulin-like peptides in the brain of Drosophila melanogaster. PLoS Genetics, in press.

 CCHamide-2 (CCHa2) は、ショウジョウバエから単離された生理活性ペプチドであるが、その機能は不明であった。 

 今回、久留米大学 分子生命科学研究所の佐野浩子講師らは、当研究所生殖発生分野の中村輝教授との共同研究により、CCHa2が個体の成長を栄養条件依存的に制御することを明らかにした。CCHa2は脂肪体や腸管で発現しており、栄養依存的に発現レベルが上昇した。CCHa2の受容体 (CCHa2-R) は、脳特異的に発現し、特にインシュリン産生細胞で強く発現していた。末梢由来のCCHa2はインシュリン産生細胞を直接活性化し、インシュリンの合成および分泌を促進することが明らかになった。また、CCHa2あるいはCCHa2-Rを欠損した個体は、成長が著しく阻害された。これらのことから、CCHa2/CCHa2-Rは末梢器官と脳を結ぶ内分泌シグナル系として働き、その生理的意義は、インシュリンを介して、個体の成長を栄養条件と協調的に制御することであることが分かった (図1)。このような制御は、栄養条件が不安定な生息環境での生存に重要な役割を持つと考えられる。

 この研究成果は2015年5月28日にPLoS Genetics 誌に掲載された。本研究の一部は、当研究所が推進する「発生医学の共同研究拠点」制度に基づく共同研究として行われた。

 

np80図1 CCHa2/CCHa2-Rシグナルによる栄養依存的成長制御

 

CCHa2は富栄養条件で発現し、脳におけるインシュリン様ペプチドの合成および分泌を促進する。インシュリン様ペプチドは、個体の成長を促進する。したがって、CCHa2/CCHa2-Rシグナルは、栄養条件と個体の成長をリンクするはたらきがあると考えられる。