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[発生研セミナー] 10月3日11:00~九州大 高田幸先生

2017.09.26 ●セミナー

第318回発生研セミナー

 

マウス精子形成過程におけるエピジェネティック制御機構の解明

 

高田 幸 博士
九州大学大学院医学研究院 応用幹細胞医科学講座

 

日 時: 平成29年10月3日(火)11:00~12:00
場 所: 発生医学研究所 1階カンファレンス室

 

 

減数第一分裂期では、組換えによる多様性の創出と次世代への遺伝情報の正確な分配に先がけて、特有の染色体動態及び構造変換が認められる。しかし、その複雑な染色体の挙動とヒストン修飾やDNAメチル化などのエピジェネティック制御との関連は未だ不明な点が多い。
我々は、ヒストンH2Aのモノユビキチン化を介して抑制性のヒストン修飾であるH3K27のトリメチル化を制御するポリコーム群タンパク質複合体(Polycomb Repressive Complex 1; PRC1)に焦点を当て、マウス精子形成過程におけるエピジェネティック制御機構について検討した。マウス分子遺伝学的解析を駆使した研究により、次のような成果が得られた。①PRC1構成因子であるScmh1が雄の性染色体のヘテロクロマチン化の機能維持に必要であること(Development 2007)、②セントロメア周辺のヘテロクロマチン領域であるペリセントリックヘテロクロマチン(Peri-Centric Heterochromatin; PCH)上のヘテロクロマチンタンパク質HP1/CBX3及びヒストンH3の9番目のリジンのジメチル化(H3K9me2)が相同染色体のペアリングに必須であること(Development 2011)、③NP95/Uhrf1はDNAメチル化を介してPCH機能を制御し相同染色体のペアリングに寄与すること(投稿中)が明らかとなった。また、PRC1の主要構成因子であり、ヒストンH2Aモノユビキチン化E3リガーゼであるRing1Bによるヒストンを介したエピジェネティック制御が、減数分裂期におけるテロメア及びセントロメア動態に密接に関与している可能性が示唆された(未発表)。本セミナーでは、これまでの研究を概説するとともに今後の展開について紹介したい。

 

文献
1. Takada Y., et,al Mammalian Polycomb Scmh1 mediatesexclusion of Polycomb complexes from the XY body in the pachytene spermatocytes. Development 134; 579-590 2007.
2. Takada Y., et,al. HP1 links histone methylation marks to meiotic synapsis in mice. Development 138; 4207-4217 2011.

 

 

連絡先 染色体制御分野 石黒 啓一郎 (内線6606)