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[発生研セミナー] 1/20 17:00~ 遺伝研 三好啓太先生

2019.12.27 ●セミナー

第380回発生研セミナー

 

 

レトロトランスポゾンの発現抑制機における
クロマチン制御因子の働き

助教 三好 啓太 博士
情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所

 

日 時: 令和2年1月20日(月)17:00 – 17:30
場 所: 発生医学研究所 1階カンファレンス室

 

 

生物のゲノムが進化過程で獲得した転移因子は、遺伝子多様性やゲノムのダイナミックな変化を生み出した。一方で、転移因子の無秩序な増殖は宿主ゲノムの安定維持に対し脅威である。真核生物は、転移因子を特異的に認識し、抑制するシステムを持つ。これまでの研究により、ショウジョウバエ生殖細胞において、転移因子であるレトロトランスポゾンの発現は、PIWIファミリータンパク質とPIWI-interacting RNA (piRNA)と呼ばれる小分子RNAの複合体により転写レベルまたは転写後レベルで抑制されることが明らかにされた。
PIWIファミリータンパク質の一つであるPiwiはpiRNA依存的に、ヒストン修飾を介したクロマチン構造変化による転写制御によりレトロトランスポゾンの発現を抑制する。ハエ個体や培養細胞を用いた遺伝子スクリーニングにより、Piwi結合因子やヒストン修飾因子などが同定された。しかし、同定された因子の多くは機能未知あることや、それらがどのような機序で機能しているのか十分に理解されていない。そこで、我々は本抑制機構の分子機序の理解を目的とし、新規関連因子の機能解明を行っている。我々が樹立した卵巣性体細胞(濾胞細胞)由来の培養細胞(OSC)は、PIWIファミリータンパク質のうち、Piwiのみを発現するため、Piwi依存的なレトロトランスポゾン抑制機構解明に非常に有用である。現在、我々はOSCにおいてノックダウンするとレトロトランスポゾンの脱抑制を引き起こす因子の解析を進めている。本遺伝子はZn-finger motifを持つ核タンパク質をコードしており、OSCにおいてノックダウンするとレトロトランスポゾン領域におけるヒストン修飾の変化が観察された。また、本タンパク質に対するモノクローナル抗体を作製し、免疫沈降法による相互作用因子の同定を行った。OSCにおいて、相互作用因子ノックダウンによりレトロトランスポゾンの発現上昇が観察された。現在、これら因子を含む複合体がどのようにクロマチン修飾を制御し、レトロトランスポゾンの発現を抑制するのか解析を進めており、その結果を紹介したい。

 

 

三好先生は、令和1年度発生医学研究所共同研究拠点に採択されております。

 

連絡先 生染色体制御分野 石黒 啓一郎 (内線6607)